研究実績の概要 |
腫瘍細胞は、低栄養および低酸素のストレス条件下であるにも関わらず、異常な細胞遊走の誘発が継続的に行われている。しかしながら、腫瘍細胞はストレス条件下で、どのようにして継続的な細胞遊走をONにしているのか謎が多い。申請者らは、独自のGTP研究から GTP代謝の細胞内局在変化により細胞遊走を制御する新たな細胞内エネルギーシステムの存在を掴むに至った。細胞遊走は低分子量Gタンパク質(small-GTPase)の活性型、不活性型のサイクルによって制御されている。これまで悪性脳腫瘍(グリオブラストーマ)形成・増殖における細胞内エネルギー物質“GTP(グアノシン三リン酸)”の役割と、GTP代謝の制御が治療標的になり得ることが明らかになっている(Nat Cell Biol 2019, Mol Cell 2016, Cancers 2019, Journal of Biochemistry 2020など)。また本研究では細胞内GTPの生合成に関与するIMPDH2の減少により、small-GTPase Racの活性抑制を介し、細胞遊走が制限されることを見出している。そこで悪性度の高い転移性腎臓がんの持続的な細胞遊走におけるGTP代謝とsmall-GTPase Racの活性制御に着目し、その分子メカニズムの解明を行う。新たな概念として腫瘍転移におけるGTP代謝の役割を明らかにし、がん治療戦略開発の新たな可能性を拓くことが期待出来る。
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