研究課題/領域番号 |
21K15026
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 裕輝 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任研究員 (50879971)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 膜タンパク質 / 品質管理 / ERAD / ER-phagy / リソソーム |
研究実績の概要 |
小胞体でのフォールディングに失敗した膜タンパク質は、小胞体ストレスを惹起するなどして様々な疾患の原因となりうる。このような不良膜タンパク質を選択的に分解することで小胞体への蓄積を防ぐ機構の一つに、プロテアソーム依存的なERAD(Endoplasmic reticulum-associated degradation)経路があり、約30年に渡る研究によりこの機構の詳細な分子メカニズムは解明されつつある。一方、不良膜タンパク質がリソソーム分解される経路の存在も知られていたが、この経路の分子機構はほぼ未解明であった。 本年度は、このリソソーム分解経路の分子機構を探索するためのゲノムワイドCRISPR/Cas9スクリーニング実施に向け、準備を行った。まずは遺伝子変異によりミスフォールディングして小胞体に蓄積することが知られている様々な不良膜タンパク質のうち、盛んにリソソーム分解されるものがないかウエスタンブロット法で検討した。その結果、Dysferlinの筋ジストロフィー変異体やGNRHRの性腺機能低下症変異体などの既知のリソソーム分解基質に加え、VAPBやSeipinの運動神経変性疾患変異体、Connexin50の白内障変異体など様々な疾患変異体について、小胞体に蓄積し、かつ盛んにリソソーム分解されることが明らかとなった。続いて、これら様々なリソソーム分解基質に、リソソーム分解プローブであるmCherry-EGFPタグもしくはmKeimaタグを付加したコンストラクトを作製した。基質のリソソーム分解に伴う蛍光特性の変化をフローサイトメトリーで検出できるか評価したところ、いずれのコンストラクトについても良好に検出できた。さらに、これら基質のリソソーム分解に必要な因子を網羅的に探索するために、Cas9を恒常発現し、かつこれら基質をテトラサイクリン誘導性に発現する恒常発現株を樹立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノムワイドCRISPR/Cas9スクリーニングの実施に向けた準備が順調に進んでおり、次年度にはスクリーニングの実施とその結果の解析が行える目処がついているため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に作製した不良膜タンパク質の恒常発現株を用いてゲノムワイドCRISPR/Cas9スクリーニングを実施し、不良膜タンパク質のリソソーム分解に必要な遺伝子群を同定する。同定した因子について、不良膜タンパク質分解において基質認識、ユビキチン化などの基質の翻訳後修飾、小胞体からの搬出などの様々なステップのうちいずれに関与するかを解析する。また、不良膜タンパク質基質のインタラクトーム解析も行い、スクリーニングのヒット因子のうち、基質との結合を介してより直接的に作用する因子を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
100円程度の端数が生じたが、翌年度分として請求した助成金と合わせて消耗品費等として使用する。
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