Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の構造解析において、安定化タンパク質とのキメラ体作製や立体構造得意的認識抗体はタンパク質安定化に大きく寄与する欠かせないツールとなっている。本研究では安定化タンパク質の代表格であるアポシトクロムb562RIL (bRIL)に対し、サメ由来の特異的抗体を取得することを目指した。サメ抗体はIgNARと呼ばれ、ヒトや多くの生物が有しているIgG型抗体とは異なりシングルドメインで抗原認識するという特徴を有する。このことから、bRILを認識するIgNARの末端領域VNARは構造解析ツールとしての有用が期待された。 昨年度までの報告で、サメにbRILを免疫し、3ヶ月後程でbRILへの抗体価の上昇は認められた。しかし、サメ脾臓を摘出し、ファージディスプレイ法によりbRIL特異的抗体の取得を目指したものの、特異的認識抗体の取得には至っていなかった。本年度は免疫時間や免疫濃度など変えることで、合計4回のトライアルを実施した。すべてのトライアルでやはり3ヶ月ごろには交代価の上昇は認められた。脾臓のサンプリング方法の検討も含めて幾度ものファージディスプレイ法による抗体取得を試みたが、結局取得には至らなかった。この間に実施した他のターゲットでは同様の系で特異的VNAR抗体が概ね取得できたことから、bRILというタンパク質の性質がサメ抗体との相性が悪く、取得が難しいのではないかと考えられた。当初の目的を達成することができず、大変残念な結果になってしまった。
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