βバレル型膜タンパク質は、グラム陰性菌の外膜、もしくは、ミトコンドリアや葉緑体といったバクテリアを起源とするオルガネラの外膜に存在するタンパク質である。これらの膜貫通領域は、βストランドが樽状の構造をとる。この膜貫通領域の構造形成と膜挿入は総じてアセンブリーと呼ばれ、それぞれのβバレル型膜タンパク質が機能する上で必須のプロセスである。βバレル型膜タンパク質は最もC末端側のβストランドに特徴的なアミノ酸配列を有する。この部分が、輸送装置に認識されることで、アセンブリー反応が開始する。本研究では、グラム陰性菌とミトコンドリアのアセンブリーの解析を実施し、それらがどのような形で保存されているかについて詳細に解析することで、βバレル型膜タンパク質の輸送に関わる、真核生物、原核生物における類似点、相違点を明らかにすることを目的としている。 本研究ではグラム陰性菌では、大腸菌を真核生物としては出芽酵母をモデル生物として用いた。大腸菌の膜画分、E. coli Microsomal Membrane (EMM)を用いた「EMMアセンブリーアッセイ」の解析では、大腸菌の輸送装置であるBAM複合体に対して親和性をもつ基質の領域の探索から新規シグナルを決定していた。本研究期間では、これらのシグナルの役割を詳細に解析し、その成果をeLife誌に発表した。 この新規シグナルがミトコンドリアにおいてアセンブリーに重要かどうかを調べるためTom40と呼ばれるβバレル型膜タンパク質をモデル基質に、ミトコンドリアインポート実験で確認したことろこれらシグナルは重要であることを確認した。加えて、これらシグナルを認識するタンパク質を決定するため、架橋実験と質量分析を組み合わせ相互作用タンパク質の同定を行ったところ、複数の候補因子を決定することができた。
|