研究課題/領域番号 |
21K15045
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
丸山 達朗 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (60795855)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | オートファジー / リパーゼ |
研究実績の概要 |
細胞質成分を包み込んだ脂質二重膜から成るオートファゴソームは液胞(リソソーム)と融合し、その内膜と内容物が液胞内酵素によって加水分解される。Atg15は液胞内に存在するリパーゼであり、オートファゴソームの膜分解を担うと考えられている。しかしながら、Atg15が液胞膜には作用せず、オートファゴソーム膜に対して選択的に作用するメカニズムは不明である。Atg15は、脂質分解を担うリパーゼ骨格に加えて、何らかの機能ドメインを有することが想定される。また、Atg15の脂質膜分解の選択性を明らかにするためには、要素を柔軟に変更できる試験管内再構成実験が有効であると考えた。そこで本研究は、構造生物学的解析および試験管内再構成実験を行い、Atg15の機能発現機構を解明することを目的とした。 本年度は、試験管内において解析するにあたり、出芽酵母由来Atg15の発現法および精製法を検討した。Atg15は液胞内移行に必要なN末端の膜貫通領域は切除して、Atg15の可溶性ドメインを基本とした。Atg15に付加するアフィニティタグの種類や融合箇所を様々に変更し、各種コンストラクトを大腸菌にて発現させ、精製した。また、蛍光標識Atg15を調製するため、蛍光タンパク質の融合を検討した。得られた各種Atg15は、ゲルろ過クロマトグラフィーにて性状を解析した。これらの解析と並行して、近年に報告された高精度な構造予測に基づいて、Atg15の変異体や欠損体を設計し、各種コンストラクトの性状解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの様々な検討から、蛍光タンパク質の融合がAtg15のフォールディングなどに悪影響を及ぼすことが示唆されており、試験管内再構成実験に適した蛍光標識Atg15の調製法を確立できていない。しかしながら、高精度な立体構造予測によって、Atg15の構造情報の詳細が明らかになっている。今後、高精度な立体構造予測を参考にして、Atg15の立体構造に与える影響が小さいと予想される分子表面のアミノ酸をシステインに変異して蛍光標識を部位特異的に導入することで、インタクトに近い状態のAtg15を調製できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
試験管内再構成実験に適したAtg15のコンストラクトを探索し、それを用いて脂質膜に対する作用を網羅的に調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
目的タンパク質の調製に難航して、想定よりも物品を消費しなかったため。 解析に耐えうる目的タンパク質を大腸菌発現系だけでなく昆虫細胞発現系にて検討する必要があると考えている。昆虫細胞発現系は費用が非常に高いため、前年度分を充当したい。
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