オートファジーは細胞内分解系の一つであり、細胞内環境の恒常性維持に寄与している。オートファジーが誘導されるとオートファゴソームと呼ばれる二重膜小胞が細胞質タンパク質や核酸、オルガネラを包み込み、内包物は液胞へと輸送されて液胞内酵素にて分解される。本研究対象のAtg15は液胞内に存在する脂質分解酵素(リパーゼ)であり、オートファゴソームが液胞に融合した後に放出される内膜小胞を分解すると考えられている。しかしながら、Atg15がどのようにして液胞膜を分解せずにオートファゴソーム内膜を選択的に分解するのかは未だ明らかになっていない。そこで本研究はAtg15のオートファゴソーム内膜選択的な分解機構を明らかにするため、主に構造生物学的アプローチを行った。 近年、公開された高精度立体構造予測プログラムAlphaFold2を用いて、Atg15の立体構造を予測した。その結果、典型的なリパーゼ活性を担うドメイン骨格に加えて、その活性部位へのアクセスを塞ぐようにヘリックス構造が配置されていること、付随的な機能未知のドメイン構造がリパーゼドメインを取り囲んでいることが予測された。この立体構造を参考にして解析コンストラクトを作製し、巨大単層リポソームを用いた共焦点顕微鏡解析に供するサンプルの調製を検討した。また、液胞内プロテアーゼにより部分的分解を受けることがAtg15の活性化に必要であることが報告されたため、この報告を参考にして解析コンストラクトを作製し、同様の解析に供するサンプルの調製を検討した。
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