研究課題/領域番号 |
21K15048
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
畠山 哲央 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (50733036)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 代謝 / システム生物学 / ミクロ経済学 / 熱・統計力学 / 最適化 / 消費者行動 |
研究実績の概要 |
生命科学や薬学、医学において、環境が変化したり、あるいは薬剤を投与したときの代謝システムの振る舞いを予測することは非常に重要である。従来の代謝のシステム生物学において、そのような代謝状態の変化を調べるためには、まず、微生物やヒトなど、対象となる生き物の代謝の詳細な情報を組み込んだモデルを構築し、その上で数理最適化の手法を利用し、環境変動や薬剤投与の前と後、それぞれの代謝状態を予測し、そしてそれぞれの代謝状態を比較する必要があった。しかし、現代の計測技術を持ってしてもなお完全に全ての反応を組み込んだ代謝モデルを作ることは不可能に近く、モデルを構成したとしてもその予想が外れることは少なくない。また、代謝状態があまり計測されていないような生き物や細胞では、そもそも代謝モデルの作成が困難である。 そこで、そのような代謝システムの理解が不完全であったり、完全に未知であったとしても適用できるような新規の理論をミクロ経済学の手法を利用して構築した。新規理論の結果は以下のようにシンプルである。環境変動や薬剤の応答に対して対象の代謝経路の応答と、炭素減などの栄養状態が変化した時の応答との間に線形関係が存在する。この理論を適用することで、全く未知の生き物や細胞であっても、栄養状態の応答を測定するだけで、その他の刺激に対する代謝応答が予測できる。新規理論においては、対象としている生き物や細胞の代謝システムが、進化において最適化されていることのみを仮定する。ここで重要なのは、どのような目的に向かって最適化しているかは問わず、また知る必要もないということである。この結果は、論文としてまとめ、プレプリントサーバに投稿済みであり(arXiv:2210.14508)、また現在論文の査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画に加えて、進化で最適化されたものであれば、任意の代謝システムにおいて成立する新規の関係式を発見した。これは当初の研究計画にないものであり、当初の計画以上に進展していると言えよう。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の計画にあったように、代謝戦略の切り替えを、ミクロ経済学の理論や、熱・統計力学相転移の理論を援用して、理解することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は予定していた海外出張がなくなり、また論文出版が遅くなったため、次年度使用額が生じた。
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