研究実績の概要 |
細胞内温度計測のAll-optical化を達成するためには高輝度の蛍光性ナノダイヤモンド(FND)を合成することが重要となる。本年度はまず、NVセンタの形成を図るため、FNDに対してさまざまな照射量(2, 4, 6, 8, 10 × 10^18 / cm2)で電子線照射を行い、減圧下800度で2時間のアニーリング、空気中550度で2時間の表面酸化処理を施し、電子線の照射量がFNDの蛍光特性に与える影響について、その蛍光スペクトルから評価した。その結果、用いた条件では、蛍光強度は電子戦照射量に依存して大きくなることが示された。さらに、照射量に伴うNV0とNV-のゼロフォノン線の蛍光強度を調べたところ、NV0については、2E18および4E18から線形に予想される強度よりも、6E18以上の照射で高いことが明らかとなった。一方NV-においては、その強度は8E18以上の照射では同様に予想される増加量よりも低くなることが明らかとなった。これらの結果から、電子線照射によってFND全体の蛍光強度は増加していくが、NV-のNV0に対する割合が減少していくことが示唆された。NV-の不電荷の由来は近傍に存在する孤立窒素原子であることが知られている。故に過剰な空孔形成は、孤立窒素原子をNVCへと変換させることによりその存在率を低下させ、結果としてNV-の比率を低下させることが示唆された。今後は最適な電子線照射条件を温度計測の観点から決定する。また、さまざまな表面化学修飾を検討し、FNDの物性を制御することにも成功した。次年度は、これら表面化学修飾を基盤として、細胞内特異部位への選択的標識技術を確立する。
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