研究課題
本研究では超高速3D超解像イメージング技術を開発し、それを用いてシナプスの群島構造を解明することを目的としている。一年度までにシリンドリカルレンズを用いた3次元1分子蛍光追跡技術を確立し、XY方向30nm程度、Z方向60nm程度の正確性をもって1分子蛍光追跡が可能となった。二年度までには液体レンズを用いた高速Zスキャンのセットアップを行い、アナログ制御信号による液体レンズの制御機構の確立、神経細胞培養の最適化を行なった。最終年度である三年度では、高速カメラの開発と調整に加え、実際の生細胞を用いた観察を行なった。我々はこれまでに通常のカメラよりも100倍高速な1分子蛍光観察用のカメラ(時間分解能33マイクロ秒)の開発を続けており、本申請研究の目的に合わせた最適化を試みた。その結果、~100 Hz、5~10 nm程度の予期しないZ方向の周期振動が確認された。これは今まで検出不可能で見逃されてきたものであり、冷却装置の水冷化やサンプルホルダーの改良などによりこの問題を解決した。これまでの結果と合わせて高速カメラの開発と応用として、J. Cell Biol.に2報論文を出版した。次に、実際の生細胞を用いた観察を進めた。まずは培養細胞に蛍光タグタンパク質を融合した膜タンパク質を発現させ、細胞膜上の拡散を3次元で追跡した。500 Hzの観察スピードで2つの焦点を液体レンズによりスキャンし、250 Hzの二焦点動画を取得することに成功した。この動画から1分子蛍光スポットを3次元追跡するアルゴリズムを開発し、通常1μm程度が限界であったZ方向の追跡範囲を2倍に拡張することに成功した。最後に神経細胞を用いた膜受容体の観察にこのシステムを応用し、シナプス内での膜受容体の運動を3次元、数十nmの精度、250 Hzの高速で観察することにも成功した。現在、この結果を元に論文を執筆中である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Journal of Cell Biology
巻: 222 ページ: e202110162
10.1083/jcb.202110162
巻: 222 ページ: e202110160
10.1083/jcb.202110160