研究実績の概要 |
昨年に引き続き、SPFマウスの時系列サンプルを用いて、ロングリードとショートリードを組み合わせたメタゲノム解析を行うことにより、数百種が同時に存在する実際の腸内細菌の生態系の中で起こる変異の時間変化を観察した。昨年得た、マウスの時系列サンプル( >50検体のショットガンメタゲノムデータと、6検体のロングメタゲノムデータ)からは、15の完全な細菌ゲノムが再構築された。その中でLactobacillus spp.のゲノムは、生後~50日、~400日にゲノム変異の増加が確認された。構築された完全ゲノムにショートリードデータをマッピングすることにより、生後すぐには1株独占状態だったが、徐々に多様性を増やし、最終的には5株程度のstrainが存在したことが推定された。当初独占状態にあった株と、一生の中盤以降に多数を占めた株は異なっており、ゲノム上では、13箇所の変異のホットスポットが存在した。また、より大きなゲノム構造の変化が起こった可能性も示唆された。 マウスの一生にわたる腸内細菌の基礎的な変動データについては、16S解析の結果を、現在communications biology誌に投稿中である (査読中)。また、予備実験として、昨年度行った高脂肪食や高繊維等を用いた食事のintervention実験と、それに付随して行った行動試験の結果についても、現在投稿中である(PLOS ONE, 投稿済)。 また、別のマウスでもSequel IIプラットフォームで2検体Hifi-readの追加解析を行った。昨年から、マウスのロングリードメタゲノムでは十分なリード数が得られないことが多かったが、NEBNext FFPE DNA Repair Mixでライブラリを前処理することで、十分な品質のデータが得られるようになった。
|