研究課題/領域番号 |
21K15068
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小玉 学 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (70883833)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | SCLC / cDDP / ATP / MTX / 6-MP |
研究実績の概要 |
ヒトSCLC細胞である SBC-3、 STC-1、MS-L-1をin vitroでの生理的培養条件下でcDDPに暴露することにより、cDDP耐性SBC-3、 STC-1、MS-L-1を樹立した。それらのcDDP耐性細胞株のachorage-independent growthが、cDDP耐性を獲得する以前と比較し亢進していることを確認した。また、cDDP耐性細胞株のヌードマウスin vivoでのxenograft腫瘍形成能が、cDDP耐性を獲得する以前と比較し亢進していることも確認した。 次にcDDP耐性SBC-3、 STC-1、MS-L-1が薬剤耐性に必要となる細胞内ATP量を増加させていることが分かった。細胞内ATP量を増加させるためには実際に細胞内のpurine核酸を増やす必要があるため、cDDP耐性SCLC株ではde novo purine核酸合成能が亢進している可能性がある。この仮説を検証するため、拡散合成阻害薬であるMTX (Methotrexate) と6-MP (Mercaptopurine)に対する感受性が cDDP耐性SCLC株で亢進しているかin vitro検でのviability assayで検証した。その結果、cDDP耐性SCLC株では核酸合成阻害薬に対する感受性がcDDP耐性を獲得する以前と比較し亢進していることも確認した。 これらの結果を受けて、今後はMTXと6-MP併用による核酸合成阻害薬がcDDP耐性SCLC株のxenograft腫瘍形成能を効果的に抑制できるか、in vivoでの薬剤効果判定実験を実施する予定である。これらの研究結果は、SCLCの薬剤耐性メカニズムの一端を明らかにするものであり、かつ臨床への応用も期待される結果となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現段階でcDDP耐性SCLC株の樹立及びin vitro、in vivoでの増殖能評価を実施できている。またin vivoで腫瘍を形成したcDDP耐性SCLC株 (SBC-3、 STC-1、MS-L-1) のサンプルも回収済みである。今後はこれらのサンプルの代謝酵素発現パターンを確認するため、iMPAQT (in vitro proteome-assisted MRM for Protein Absolute QuanTification) 解析と代謝物の発現量を網羅的に解析するmetabolomics解析を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はcDDP耐性SCLC株 (SBC-3、 STC-1、MS-L-1) のtransomics解析による包括的解析を実施し、更なる薬剤耐性メカニズムの検証を図る。
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