研究結果: 小細胞肺がんの細胞3株からcDDP 耐性株を樹立し、代謝変化をモニターするためメタボロミクス解析を行った。 その結果、薬剤耐性がんでは感受性がんと比較しグルコース取り込み能が亢進し、細胞代謝活性が高まっていることを確認した。さらに、核酸合成が亢進していることが明らかになった。上記の結果から、核酸合成を効率的に阻害するため、複数の核酸合成阻害剤を併用したところ、薬剤耐性がんでは感受性がんと比較し核酸合成阻害への感受性が亢進していることが明らかになった。これらの結果から、cDDP 耐性ゼノグラフトマウスに対し核酸合成阻害剤による化学療法を実施したところ、宿主の顕著な生存期間の延伸とcDDP 耐性ゼノグラフトの腫瘍形成能の抑制を実現した。社会的意義: 小細胞肺がんは第一選択薬であるcDDPに対し一過性に感受性を示すものの、即座に抵抗性を獲得する。また小細胞肺がんでcDDP治療抵抗性を有する患者の生存予後は半年から一年前後であり、著しく予後不良である。小細胞肺がんの新規治療法を確立するため過去にさまざまな治療薬の治験が実施されたものの、有効性を確認された治療薬がなく、満たされないメディカルニーズとして問題になっている。これらの背景を踏まえ、我々はcDDP耐性小細胞肺がんの代謝解析を実施し、薬剤耐性小細胞肺がんでは感受性がんと比較し核酸合成阻害に対する感受性かが亢進していることを明らかにした。この研究結果から、核酸合成阻害を主体とした化学療法は臨床的に問題になっている小細胞肺がんのcDDP耐性を克服するための新たなる治療介入法となる可能性がある。
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