研究課題/領域番号 |
21K15074
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
関 真秀 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任准教授 (90749326)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | DNAメチル化 / エピジェネティクス / ナノポアシークエンサー |
研究実績の概要 |
ヒト乳がん細胞株において、Enzymatic Methyl seq (EM-seq)による塩基変換とナノポアシークエンスを組み合わせた微量DNAから実施可能な全ゲノム長鎖DNAメチル化解析法nanoEMの開発を行った。また、塩基変換を用いた長鎖DNAメチル化解析のための実用的なパイプラインが存在しなかったため、データ解析パイプラインの開発についても行った。ショートリードのBisulfite-seq(BS-seq)に用いられるBismarkの解析戦略をロングリード用に応用したパイプラインを構築した。 開発したパイプラインで細胞株のnanoEMデータを解析し、メチル化状態を算出した。取得済みのショートリードのBS-seq及びEM-seqとナノポアシークエンスからのDNAメチル化の直接検出のデータと比較したところ、nanoEMはいずれのデータとも非常に高い相関を示すことが確認された。さらに、nanoEM法のインプット量の微量化について検討を行い、10 ngのゲノムDNAからであれば、十分な質のデータを取得できることを示した。開発したnanoEM法をヒト乳がん検体に応用し、臨床検体由来の微量DNAでも実施可能なことを示した。nanoEMリードを解析することにより、ショートリードでカバーすることが困難なリピート領域やインプリンティング領域を含む染色体ごとに異なるメチル化状態や構造変異周辺のメチル化状態の検出に成功した。 これらの成果については、2021年度中に、国内外の3つの学術雑誌への論文発表(Sakamoto et al. Nucleic acid research 2021; Zaha et al. Bio-protocol 2022; 関 他. 月刊細胞 2021)及び国内学会の学会発表(関 他 第44回分子生物学会年会 2021)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
微量DNAからの全ゲノム長鎖DNAメチル化解析手法のnanoEMについては、開発及び臨床検体への応用性の検討は完了した。nanoEM法については、論文や学会発表についても行うなど、成果発表についても行うことができた。 さらに、ヒトの同一個人由来の6臓器のメチル化解析について、イルミナシークエンス及びナノポアシークエンスによる全ゲノムシークエンスを2021年度中に完了している。また、解析についても、イルミナシークエンスからのヘテロ接合性SNPの検出、ナノポアシークエンスを用いたヘテロ接合性SNPのphasing解析、相同染色体間でのdifferentially methylation regionの検出まで既に完了しており、当初の予定以上に順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、ヒトの同一個人由来の7臓器のメチル化解析について、引き続き解析を行う。さらにロングリードのRNA-seqデータとの対応付けを行うことで、染色体間のメチル化状態の違いによるmRNA発現不均衡の制御について明らかにする。これらの結果について、学術論文として発表する。さらに、カタログ化したデータについては、申請者の研究室が管理するデータベースDBKERO(https://kero.hgc.jp/)からの公開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの蔓延により、2021年度中の国内学会への参加回数を減らしたため、次年度使用額が発生した。 次年度使用額については、2022年度中の出張するために使用する予定である。
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