2022年度は、前年度に開発した微量DNAから実施可能な全ゲノム長鎖DNAメチル化解析法nanoEMの効率の改善と応用法の開発を行った。 nanoEMについて、条件検討した結果、塩基変換を行う際のDNA変性によって、長いDNAが分解していることが判明した。そのため、変性の条件をより穏やかな条件に変更したところ、60倍以上にライブラリー収量を改善することができた。 DNAメチル化解析においては、全ゲノムを対象とした解析よりもCpGアイランドなどのメチル化による制御を受ける領域を網羅的かつ高深度に解析することが重要となる場合が多い。そこで、Exomeシークエンスなどに使用されるハイブリキャプチャー法をnanoEMと組み合わせることで、調節領域特異的な長鎖メチル化解析法targeted nanoEM 法(t-nanoEM)の確立を試みた。まず、塩基変換前のDNAをキャプチャーする方法で検討を行ったところ、長いDNAが得られないという問題点が判明した。そこで、塩基変換及びPCR増幅後のDNAをキャプチャーする方法に切り替えたところ、5 kbを超える長いDNAが取得できた。また、微量化の検討を行ったところ、10 ngのDNAからも実施することができることを確認した。現在、さらなる改良を実施しており、最終的なプロトコルを確立し次第、乳がん細胞株及び臨床検体において解析を行いに論文化を予定している。 2021-2022年度の成果については、国内外の3つの学会において発表及び招待講演(Seki & Suzuki. AGBT 2023; 関.第15回日本エピジェネティクス研究会 2022; 関、鈴木.第8回日本HTLV-1学会学術集会)を行った。また、本研究の実施過程に得られたロングリードの情報解析の知識を活かして書籍の分担執筆(三宅、他.がんゲノムデータ解析 2022)を行った。
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