当該年度では、CRBNのサリドマイド結合ドメインを用いることで、より高感度にサリドマイド誘導体依存的なネオ基質のビオチン化が可能であることを見出した。さらに、昨年度に確立した評価系を用いることで、抗血液がん作用に関与するネオ基質を選択的に分解誘導する新規サリドマイド誘導体の評価を行い、サリドマイド誘導体開発に有用な評価系であることを示した。また、本評価系で見出した新規ネオ基質であるZMYM2-FGFR1融合タンパク質が分解されることで、ZMYM2-FGFR1の下流因子の活性化が抑制されることを明らかにした。これらの結果は、サリドマイド誘導体がZMYM2-FGFR1によって引き起こされる血液がんの治療薬となり得ることを示唆している。 さらに当該年度は、マウスRosa26遺伝子座にCRBN-AirIDを組み込んだゲノム編集マウスを対象にした解析を行った。興味深いことに、CRBN-AirIDはネオ基質の分解誘導能が低く、マウスCrbnはネオ基質を分解誘導能が無いため、プロテアソームによるネオ基質の分解を考慮する必要がないことを明らかにした。さらに、サリドマイド誘導体を腹腔内投与することで、マウスの脾臓および胸腺において代表的なネオ基質IKZF1やIKZF3のビオチン化を確認することに成功した。重要なことに、マウス個体内におけるサリドマイド誘導体依存的なネオ基質のビオチン化は、サリドマイド誘導体のネオ基質選択性を反映していた。これらの結果は、マウス個体内において、サリドマイド誘導体依存的な相互作用解析が可能であることを示唆している。
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