研究実績の概要 |
これまでの自身の近接依存性標識法TurboIDを用いた研究から, 細胞死実行因子であるショウジョウバエ実行カスパーゼDcp-1とDriceはそれぞれに固有の反応場を形成し, 非細胞死性の機能を発揮することが示唆されていた. 2021年度は, ショウジョウバエ成虫の脳においてTurboIDによりカスパーゼ近接タンパク質を網羅的に同定した. 同定したタンパク質のうち, 特定の膜タンパク質はスプライシング依存的にカスパーゼとの相互作用を強め, 活性化を惹起することを見出した. 以上の結果から, 生体組織において, カスパーゼ近接タンパク質からなる固有の反応場が確かに存在し, 非細胞死性の活性化を促す可能性が支持された. また, その反応場を構成する具体的なタンパク質の同定にも成功した. さらに, 非細胞死性の微弱なカスパーゼの活性化を生体で検出する高感度レポーターショウジョウバエ系統 (MASCaT) の作出に成功した. 2022年度は, ショウジョウバエ成虫の脳において若齢個体と老齢個体を比較して近接タンパク質を網羅的に同定した. その結果, カスパーゼ近接タンパク質は老化依存的に変動することを見出した. これまでに, 特定の嗅覚受容体神経において老化依存的なカスパーゼの活性化が観察されることが報告されていた. そこで, MASCaTを指標とし, 老化依存的に増加する近接タンパク質に対するRNAiスクリーニングを実施した. その結果, 老化依存的にカスパーゼの活性化を促進する2つのタンパク質を同定した. 以上の研究結果は, 生体組織においてカスパーゼ近接タンパク質からなる固有の反応場が条件依存的に変動し, その結果としてカスパーゼの活性化を促す可能性を示す.
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