研究課題
本年度は採択初年度であることから、まず課題遂行に必要な蛍光プローブ発現用のプラスミド構築、それらを導入した安定発現株の作成から行なった。ミトコンドリアに加え、各細胞小器官を標識する蛍光プローブを構築し、タグの場所や付加する蛍光タンパク室の変更などの試行を重ねることで、3つ以上の複数のターゲットを多色イメージングにより同時に測定することが可能な細胞株の作成に成功した。同時に、ミトコンドリアの活性やそれに伴う細胞内状態変化をイメージングに基づいて測定するため、Ca2+や細胞内pHの変動を計測できる蛍光プローブの性能評価を行い、それぞれ本課題で使用する細胞株において高感度での測定が可能なことを確かめた。さらに、本課題で主に行う実験系である、微小流路を用いた灌流実験にも着手した。PDMSを用いた微小流路の作成や顕微鏡ステージ上での送液による安定した走化性物質の勾配形成、さらに流速変化による勾配反転など、計画している実験に必要な技術を習得した。上記で作成した株と灌流実験系を合わせた多色イメージング撮影により、走化性という細胞極性が明確に定まる運動時のミトコンドリアなど各細胞小器官の細胞内配置とその動態の観察を行った。これにより、細胞極性の形成にしたがって細胞内小器官にも偏った配置が見られることがわかった。また、勾配反転によりそれまで直進していた細胞が向き直りあるいは極性の消失・再形成を経て新たな勾配へ進むことを確かめたが、特に極性の再形成時に細胞内小器官の配置換えが起きることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
本課題遂行に必要な蛍光プローブおよびその発現株のうち主要なものの作成はおおよそ完了している。さらに必要な場合でも既存のプラスミドなどで対応可能なため、今後の実験計画の実施も速やかに行える。本課題で行う実験のなかで操作が複雑な部類である、微小流路を用いた灌流実験についても昨年度に技術を習得しデータを得ているため、概ね順調に計画は進行してい流。
初年度に作成した細胞株を用いた測定を行っていく。灌流による走化性勾配形成下での持続的な走化性に加え、勾配反転に応じた細胞極性の再形成における細胞内小器官の配置の動態を詳しく解析していく。また、初年度に機能を確認したCa2+, pHプローブ用いることで走化性時や極性の再形成におけるミトコンドリアのシグナル変化を測定する。より直接的にミトコンドリアの状態を測定するため、ATPやミトコンドリアの膜電位を計測できるプローブを本課題で用いる細胞種に適用することを試みる。それらの測定系が立ち上がった後、ミトコンドリア活性や細胞の極性を消失させる様々な阻害剤処理下での測定を試みる。CRISPR/Cas9による遺伝子欠損株の作成も行えるようになってきたため、必要に応じて走化性異常の表現型が報告されている遺伝子破壊株を作成する。さらに、ここまでは扱いやすい未分化の細胞を用いて測定系の確立を主に行ってきたため、細胞運動の形態が異なる分化細胞を用いて同様の測定を行うための条件出しにも着手していく。
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Journal of the Physical Society of Japan
巻: - ページ: -
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 118(50) ページ: -
10.1073/pnas.2110281118