研究課題/領域番号 |
21K15089
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
重富 健太 九州大学, 理学研究院, 助教 (90878240)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | クローディン / ターンオーバー / ユビキチン |
研究実績の概要 |
タイトジャンクションは、膜タンパク質であるClaudinによって形成される上皮細胞のバリア機能を担う細胞接着構造である。タイトジャンクションの形成領域の大きさは一定に保たれることが報告されている。 近年の顕微鏡技術の発達により、新規合成されたClaudinは、既存のタイトジャンクションの基底側より結合し、タイトジャンクションの頂端側からエンドサイトーシスにより排除されるという、方向性を有したターンオーバーが存在することが明らかになった。しかし、Claudinのターンオーバーの分子機構に関しては未解明な点が多く、タイトジャンクションの形成領域を一定に保つ機構も未解明である。本研究提案では、Claudinを裏打ちするZOタンパク質やユビキチンリガーゼに着目し、タイトジャンクションのターンオーバー機構の解明に取り組み、タイトジャンクションの定常性を解明することを目指す。 本研究では、これまでに、タイトジャンクションの形成に必須の構成要素であると考えられてきたZO(Zonulla Occludens)タンパク質を欠損し、タイトジャンクションが消失した細胞においても、プロテアソーム阻害剤を細胞に作用させることで、ZOタンパク質、非依存的にタイトジャンクションの形成が誘導されることを明らかにしてきた。これは、Claudinのユビキチン化の変化によるものではないかという仮説を立て、検証を行ってきた。現在までのところ、ユビキチン化修飾されたClaudinに結合すること可能性を有したタンパク質を同定し、現在解析を行っている。また、プロテアソーム阻害剤だけでなく、リソソーム阻害剤でも、ZO欠損上皮細胞においてタイトジャンクションの形成が誘導されることを新規に発見した。これに関しても、検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までのところ、ZO欠損細胞を用いて、ユビキチン発現細胞を樹立することができ、プロテアソーム阻害剤などで、処理したときのその局在の変化を観察することができた。これは、ZO欠損細胞において、ZO非依存的にタイトジャンクションが形成される際に、ユビキチン化が関与することを示唆している。また、プロテアソーム阻害剤以外にもリソソーム阻害剤を作用させることでも、ZO欠損細胞で、タイトジャンクションの形成を誘導することを新規に確認した。この結果は、プロテアソームだけで、リソソームによる分解も関与していることを示唆しており、claudinのターンオーバーを解明する手がかりになると考えられる。今後さらなる解析を行いたい。 また、Claudinのターンオーバーに関与する可能性のあるタンパク質を同定し、現在、その機能の解析を行っており、実際にClaudinのターンオーバーに関与しているかを明らかにしたいと考えている。以上の結果より、現在のところ概ね順調に進んでいると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ユビキチン化修飾がClaudinのターンオーバーで、実際に起きているのかを直接的に確かめる。また、ユビキチン化修飾が起きている場合には、タイトジャンクション領域のどの領域で生じているのか、Claudinのターンオーバーにおけるユビキチン化修飾などの翻訳後修飾の変化を超解像度でタイトジャンクションを観察することで解析したい。 これまでは、プロテアーゼの関与を中心に考慮し、研究を進めていたが、リソソームの関与を示すデータを得た。そのため、今後は、リソソームも考慮に入れた解析を行いたいと考えている。具体的には、Claudinが細胞膜より取り込まれる際には、小胞としてエンドサイトーシスされるが、この小胞膜上に存在するclaudinが分解されるには、プロテアーゼでは不十分である可能性が考えられた。しかし、リソソームを考慮に入れることで、例えば、小胞がオートファゴソームに取り込まれ、リソソームにて分解されることが、過程される。そこで、オートファジーのタイトジャンクション形成への関与を今後、ZOタンパク質との相互作用などを解析し、細胞生物学的に明らかにしたいと考えている。
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