生体恒常性を維持するための最も強固なバリアシステムの一つとして血液脳関門(blood brain barrier: BBB)が知られる。BBBを構成する脳血管内皮細胞は、細胞間接着装置タイトジャンクションを介して互いに接着して脳血管を構築する。このときタイトジャンクションは内皮細胞間の隙間を密閉し、強固な細胞間バリアとして機能する。脳血管内皮細胞が構築するタイトジャンクションは、BBBの中心的な構成要素として注目されてきたが、申請者は最近、脳血管の周囲をくまなく覆う間葉系細胞のアストロサイトが、神経病態下にてタイトジャンクションを構築し、BBBを動的に制御する可能性を見出した。 本研究では、アストロサイトに発現するタイトジャンクションの細胞間接着タンパク質クローディンファミリーメンバーに着目し、その生体外での再構築を行い、単一種または複数種のメンバーによる多様な細胞間バリア構築メカニズムを明らかにした。また、脳血管内皮細胞とアストロサイトとの連関の視点からBBB研究を進めていく過程で、脳血管内皮細胞のタイトジャンクション構成分子オクルディンと神経病態との関連について、オクルディンノックアウトマウスを軸とする解析を共同研究にて進めた。さらにタイトジャンクションの構築・制御因子である裏打ちタンパク質や細胞骨格に着目し共同研究を進めた。これらが液-液相分離し上皮細胞間バリアを構築・制御するといった新規メカニズムを提示した。
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