研究課題/領域番号 |
21K15093
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
平田 恵理 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, 次席研究員(研究院講師) (70882140)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 出芽酵母 / Acb1 / 細胞外分泌 / ACBP / Rim101 |
研究実績の概要 |
現代社会において、肥満率の増加は世界的な問題となっている。ごく最近になって、哺乳動物においてAcyl-CoA-binding protein (ACBP)の細胞外放出量が肥満をコントロールしている可能性が示唆された。しかしながら、ACBPがどうやって細胞外へ放出されているのか、その分子機構はほとんど分かっていない。そこで本研究では出芽酵母の遺伝学を用いてACBP放出経路の解明を目標とした。 我々のこれまでの研究により、酵母のACBP放出に関わる遺伝子群の一次スクリーニングが完了している。同定した遺伝子群には細胞膜ストレス応答に必要なRim101経路や膜のリモデリングに必要なESCRT遺伝子群が含まれていた。一方で、他グループの先行研究で関与が示唆されていたオートファゴソーム形成に関連した遺伝子群は、我々のスクリーニング結果には含まれていなかった。 そこでまず当研究では、ACBP放出とオートファジー経路の関係を調べることとした。オートファジーの各ステップに機能する遺伝子群を欠損した変異株を用いてACBP放出を誘導し、培養上清を回収してACBP放出活性を調べた。その結果、オートファジー関連遺伝子群の欠損株でもACBPが放出されていることが示唆された。また、Rim101経路に関わる遺伝子の欠損株ではACBP放出活性が低下していることが明らかとなった。これらの結果は一次スクリーニングの結果と整合性が取れる結果であった。このことから、ACBP放出にはオートファジー経路ではなくRim101経路が関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度当研究を進めるにあたり、コロナウイルスによる影響で出勤ができない期間があったため、想定していたよりも研究を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
Acb1-NanoLucを用いたACBP放出の活性測定により、ACBP放出がオートファジーではなくRim101経路に関与している可能性が示された。今後はまず、ACBPタンパク質が実際に酵母の培養上清に放出されているのかを知るために、ウェスタンブロットでACBPタンパク質を検出する。 さらに、細胞内でのACBPタンパク質の局在を蛍光顕微鏡あるいは電子顕微鏡を用いて観察する。蛍光顕微鏡観察については、ACBPと同時に他のオルガネラを蛍光標識することで、ACBPがどのタイミングでどのオルガネラを通過するのかを調べる。 これらの実験により、ACBPの細胞外放出経路の全容を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度においては、コロナウイルスの影響により出勤ができない期間があったため、当初想定していたよりも研究を進めることができず、経費についても想定よりも使用額が少なくなった。
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