研究課題/領域番号 |
21K15097
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
越智 翔平 東北大学, 医学系研究科, 助教 (30884217)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 性差 / 性分化 / 大脳皮質 / 胎生期 / 神経分化 |
研究実績の概要 |
ヒトを含む哺乳類の脳には、脳の大きさや病気の発症頻度に関する性差が存在することが知られている。脳の性分化決定には、出生前後における精巣由来の性ホルモンの寄与が大きく、生後に主に進行すると考えられてきた。そのため、性ホルモンの影響が少ない胎性期における脳の組織構築に関する雌雄差はほとんど分っていない。私たちは、予備的に雌雄胎仔マウス終脳由来を用いた網羅的解析(RNA-seq解析)を実施し、種々のニューロンに発現がみられる遺伝子の発現が雌で上昇することを見出した。また、雌で発現上昇を認めた多くのニューロン関連遺伝子は、公開データベースを参照にしたところ、大脳皮質原基において強局在を認めることが判明した。そこで、本研究では、胎仔マウスの大脳皮質原基における組織構築過程に焦点を当てた組織学的解析を実施した。神経発生後期の雌胎仔マウス大脳皮質原基において神経細胞層の相対領域が減少した。しかしながら、胎仔マウス大脳皮質原基における細胞増殖、細胞死に関しては明らかな雌雄差はみられなかった。以上の結果から、雌胎仔マウスの大脳皮質原基は神経分化が亢進するものの、神経幹細胞から神経細胞への分化のタイミングに関する厳密な雌雄差は依然として分かっていない。今後は、マウス胎仔神経幹細胞の系譜解析や特定の脳領域毎における神経幹細胞から神経分化の運命決定過程を時空間的に追跡することで、遺伝子発現に関する雌雄差を詳細に探索する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経発生初期、中期、後期における雌雄の胎仔マウス由来の大脳皮質原基を取得し、神経分化、細胞増殖、細胞死に関する遺伝子の局在に関する雌雄差を探索した。その結果、神経発生後期の雌胎仔マウスの大脳皮質原基において神経細胞の領域が減少した。しかしながら、胎仔マウス大脳皮質原基における細胞増殖、細胞死に関しては明らかな雌雄差はみられなかった。本研究計画は、当初に着想した研究計画を全て達成しており、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
子宮内電気穿孔法とFACSや組織染色を用いることで、雌雄胎仔マウスの神経幹細胞における細胞系譜を探索し、ニューロン分化のタイミングを調節する因子の発現推移を詳細に探索する。先端バイオイメージング支援プラットフォーム(ABiS)のサポートにより、レーザーマイクロダイクションを用いた特定領域における遺伝子発現に関する雌雄差の探索を行なっている。これらの解析により、神経幹細胞から神経細胞分化のタイミングが性差によって制御される分子機構の一端を明らかにする。
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