研究課題/領域番号 |
21K15102
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古澤 孝太郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (30898961)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 神経回路再編 / 感覚ニューロン |
研究実績の概要 |
脳神経回路の大まかな配線は胎児期に形成されるが、この時期の脳神経回路は過剰量の神経突起を張り巡らせている。そのため、その後の発達段階において、余分な神経突起を淘汰する「神経突起の選択的除去」を通じて、機能的な情報処理回路へと成熟する。神経突起の選択的除去の異常は、自閉症などの発達障害の一因となる可能性が示されているため、神経突起の選択的除去は脳発達の根幹を担う機構であると考えられている。神経突起の選択的除去のプロセスは、複数本の突起の中から除去される突起が「選択」される過程と、それに引き続き、突起が「除去」される過程から成り立つ。これまで、突起の除去過程について多くの研究がなされ、その細胞・分子メカニズムが明らかにされてきたが、その一方で、突起が「選択」される仕組みに関してはほとんど理解されていない。その理由として、この「選択」という不明瞭な過程を、神経細胞の外部形態などから判別することが困難であることが挙げられる。つまり、選択メカニズムの研究を行うためには、除去される突起として選択されたことを識別するための何らかの指標が必要である。ショウジョウバエ感覚神経細胞において、神経突起が除去される約3時間前に、将来的に除去される突起において「低頻度カルシウム振動」が発生する。当該年度において申請者は、この低頻度カルシウム振動を指標にして神経突起の選択的除去に関わる因子を網羅的に探索しすることで、ミトコンドリア及びその関連因子を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経突起の選択的除去を明らかにするために、低頻度カルシウム振動の発生に必要な因子として、ミトコンドリア及びその関連因子を同定した。加えて、神経回路再編期におけるミトコンドリア動態の生体イメージング法を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
神経回路再編期におけるミトコンドリアの動態を生体イメージングする。具体的には、mito-GFP などのミトコンドリア可視化プローブを、ショウジョウバエ感覚神経細胞に発現させ、神経回路再編期におけるミトコンドリアのダイナミックな細胞内輸送を経時観察する。このとき、膜結合型tdTomato を共発現させることで、神経突起の構造変化とミトコンドリア動態を同時イメージングする。イメージングのデータから、「ミトコンドリアの時間依存的な空間分布変化や形態変化」と「突起構造変化」の相関関係を定量的に解析する。この解析により、複数本の突起の中から除去される突起を規定するミトコンドリアの時空間的な振る舞いを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画においては、スクリーニングを通じて見出した低頻度カルシウム振動の制御因子について解析するために、新たな生体イメージングの実験系を立ち上げる予定だった。しかし、研究の進展に伴い、当初予想し得なかった神経回路再編が起こる新規領域を見出した。この知見に関して十分な実験データを取得するために予想外の日数を要した。そのため、生体イメージング実験系の確立が後回しとなり、年度内における当該物品の購入が困難になった。
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