研究実績の概要 |
本年度は、マーモセットから採取した生殖巣細胞、および新たに培養法を確立した精子幹細胞のシングルセル遺伝子発現解析を行った。それらを通して、霊長類特異的なマーカーの探索や、多能性幹細胞から機能的配偶子を誘導する上で必須となるような遺伝子群の同定を進めた。 具体的には、胎生60~100日齢のマーモセットから生殖巣を回収し、シングルセルRNA-seq解析を行い、霊長類特異的な生殖細胞マーカー遺伝子の発現、ならびに生殖巣体細胞の遺伝子発現プロファイリングを作成した。以上の解析より、培養下で多能性幹細胞からの生殖巣再構築を目指す上での重要な知見が得られた。 さらに、マーモセットの胚性幹細胞に生殖巣体細胞マーカー、具体的にはT, GATA4, OSR1, FOXF1, SF1, FOXL2遺伝子等にゲノム編集によって蛍光タンパク遺伝子を導入した株を複数作製した (Yoshimatsu et al., Biology 2022)。 今後は、これらの株を用いて霊長類における生殖巣再構築を目指して行くとともに、既に取得したシングルセル解析の結果とをまとめるとともに、多能性幹細胞を用いた分化誘導系の構築に取り組んでいく。 さらに、生殖細胞マーカーとしても使用できるOCT4, DDX4にマーモセットの受精卵において蛍光タンパク遺伝子を導入する試みも実施し、受精卵の発生によって蛍光タンパクが発現するのを確認した。今後は、これらの技術を用いた個体作出の試みも実施する。
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