研究実績の概要 |
本申請課題のねらいは、細胞外電極によるプラストキノンプールの酸化を通して、光合成電子伝達のリミッター(RISE)を解除し、光合成の促進を実現することであるが、課題で対象とする光合成微生物シアノバクテリアではチラコイド膜上に光合成と呼吸、2つの電子伝達系が存在しており、光非依存的なプラストキノンプールの酸化還元を考慮する必要がある。昨年度は、シアノバクテリアにおける酸化的ペントースリン酸経路(OPPP)がプラストキノン還元を通して細胞電流の大きさに影響することを明らかにした(Hatano et al. 2022 Photosynthesis Research, https://doi.org/10.1007/s11120-022-00903-0)。今年度は、その生理活性の定量に取り組み、OPPPによる電子伝達フラックスが光合成電子伝達の4割ほどに達することを明らかにした(Kusama et al. 2022 Journal of Plant Research, https://doi.org/10.1007/s10265-022-01401-z)。また、シアノバクテリアにおいて細胞外膜が細胞外電子伝達に与える影響を明らかにした研究(Kusama et al. 2022 Nature Communications, https://doi.org/10.1038/s41467-022-30764-z)に部分的に携わる中で、細胞外膜の剥離が本申請課題においても有効に働きうることを推定した。本年度の終わりには、研究の総括として光合成および呼吸電子伝達を含めたシアノバクテリア電子伝達反応に関する総説を公表した(Shimakawa 2023 Journal of Experimental Botany, In press)。
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