研究課題/領域番号 |
21K15128
|
研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
佐々木 武馬 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 助教 (60759497)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 細胞質分裂 / 微小管 / フラグモプラスト / 微小管付随タンパク質 |
研究実績の概要 |
細胞分裂は生物の体を形づくるための根源的な生命現象です。なかでも陸上植物は細胞板により細胞質を区切ることで分裂する独自の分裂様式を進化させてきました。この分裂様式では細胞板の建設される位置と角度は厳密に制御されています。この制御の結果、陸上植物は複雑で規律だった細胞の並びを作り出すことができます。このように陸上植物は細胞板を用いた細胞分裂様式を進化させることで、多種多様な形態を獲得してきました。陸上植物細胞の分裂過程では細胞板を構築するために独自の微小管構造が用いられており、細胞板形成の中心的な役割を果たします。これら微小管構造の解析が、陸上植物の分裂様式の理解に欠かせません。しかしながらその理解は、これら微小管構造の制御因子の分子的な解析が不足しているために未だに不十分です。本研究ではこれら微小管構造を制御する因子の探索およびその解析をシロイヌナズナおよびゼニゴケを用い実施することで、陸上植物の細胞分裂様式を分子的に理解することを目的としています。これまでの研究では陸上植物に特異的な微小管付随タンパク質を新たに同定し、シロイヌナズナおよびゼニゴケの細胞分裂時微小管構造の動態を制御することを明らかにしました。今後はこれら微小管付随タンパク質の機能とそれにより駆動される陸上植物に独自な細胞分裂時細胞分裂構造について解析を進めることで、陸上植物の分裂様式の分子的な理解を進めていきます。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにシロイヌナズナおよびゼニゴケを用いて陸上植物に特異的な微小管付随タンパク質の解析を行ってきました。動物細胞では紡錘体の向きが中心体により維持されることで細胞の分裂方向が決まります。しかしながら多くの陸上植物の体細胞では中心体は欠損しています。かわりにフラグモプラストと呼ばれる微小管構造が細胞板を適切な位置に構築することで、細胞の分裂方向を決定します。同様にゼニゴケもフラグモプラストを用いて細胞板を構築することで細胞分裂します。一方でゼニゴケの細胞分裂過程では紡錘体形成前に星状体構造をとる微小管構造が観察されます。これまでこの微小管構造の働きはわかっていませんでした。我々は陸上植物特異的な微小管付随タンパク質を欠損させることで、この星状体構造が正しく形成されなくなることを確認しました。さらにこの変異体では紡錘体の極の位置に異常をきたし適切な方向に細胞板を建設できないことを発見しました。これらの結果は多くの陸上植物に見られるフラグモプラストを用いた細胞板による分裂方向の決定に加え、ゼニゴケでは紡錘体の極の維持によっても細胞分裂面を制御する機構を有することを示唆します。以上の結果は陸上植物が現在の細胞分裂様式を獲得した過程を解く手がかりになると考えており、本年度も引き続き解析を続けていく予定です。 また本年度は細胞分裂時微小管構造を定量的に評価する方法について報告しました。この手法ではこれまでに定量的評価の難しかったフラグモプラストの特徴を定量的に示すことができます。この手法により植物特異的な微小管構造の解析を共通の尺度で進めることができます。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き植物特異的微小管付随タンパク質の細胞分裂における働きについて解析を進めます。特に因子の細胞内における時空間的局在の解析、遺伝子欠損変異体の表現型解析、因子同士の相互作用解析、物理的性質の解析を通じ、それぞれの因子の特性について掘り下げて解析する予定です。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の変更に伴い、次年度に使用することとなったため。
|