研究課題/領域番号 |
21K15132
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
竹見 祥大 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (70871440)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腸オルガノイド / パネート細胞 / 脱分化 |
研究実績の概要 |
本研究は小腸上皮幹細胞が死滅した際に、幹細胞付近の分化細胞が脱分化を引き起こし幹細胞様の性質を獲得する機構を解明しようとするものである。マウス腸オルガノイドを作製し、幹細胞と、幹細胞に隣接するパネート細胞に異なる蛍光タンパク質を導入し蛍光を指標に脱分化を観察する計画であった。また、リアルタイムに脱分化を観察するために、共焦点レーザー顕微鏡下で細胞を追跡しながらパルス秒レーザーを幹細胞に照射することで幹細胞の死滅を誘導することを計画していた。令和3年度は、腸幹細胞が緑色蛍光を呈するLgr5-GFPマウスからの腸オルガノイドの作製を試み、効率よく作製できるプロトコルを確立した。しかし、腸オルガノイドを作製してから時間が経つにつれ、蛍光を呈する細胞が減少していくことが明らかになった。そのため、本実験を行う際にはマウスから単離した初代腸オルガノイドを用いて実験を行うことにした。続いて、マウス腸オルガノイドの中の1細胞を死滅させるのに適切なレーザーの照射時間と強さの検討を行った。レーザー波長が780 nm、レーザーパワーが3095 mWの条件において10回照射を行ったところ、レーザーを照射した幹細胞が死滅した。死滅した幹細胞に隣接するパネート細胞を継時観察した結果、2時間後にはパネート細胞に見られる細胞内の小胞が消失したことからパネート細胞が脱分化を引き起こしたことが考えられた。今後は引き続きレーザー照射後の細胞の挙動を観察していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、レーザー照射後の細胞挙動の観察を行うことができた。しかし、幹細胞の蛍光が継代を重ねるにつれ退色するという新たな問題が発覚し、解決策としてマウスから単離した初代腸オルガノイドを用いることにしたため、実験の進捗が当初の予定より進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
腸オルガノイドをマウスから作製する際に、なるべく多くのオルガノイドが作製できるよう幅広い腸領域を用いるとともに、作製できたタイミングでより多くのレーザー照射実験を一度に行うようにする。脱分化する時間間隔が特定できた後に、細胞のRNA seq解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、当初の予定よりも実験時間が減少したため、及び、腸オルガノイド培養に必要な物品等が入手困難となり、実験を進めることが難しかったため、次年度使用額が生じた。 計画的に使用できなかった助成金は、翌年度にまとめて使用する予定である。
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