研究課題/領域番号 |
21K15139
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
冨菜 雄介 北海道大学, 電子科学研究所, 特任助教 (70835959)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 膜電位イメージング / コネクトーム / ヒル / 神経生理 / ニューロン / 多機能回路 / シナプス / 無脊椎動物 |
研究実績の概要 |
本研究では「生理学的知見と解剖学的知見の“直接的”な融合」という視点に立ち、複数の行動や知覚において関わる多機能性神経回路の機能を支えるメカニズムの生物学的理解を目指す。そのために、神経回路レベルでの解析において類い希な有利性をもつヒルをモデルと して、先行研究で得られた機能的コネクトームデータを活用する。具体的には、遊泳と這行の2種類の移動行動に焦点を当て、「多機能性ニューロン群の各行動に対応したシナプス電位統合部位を有する」という仮説を検証する。 本研究計画では、まずはヒル神経系の機能的コネクトームデータを利用して多機能性神経回路の構成要素について探索を行い、次にそのデータ に基づいた実験・理論的な研究を行う。本研究で明らかにする範囲は、多機能性ニューロン群の神経突起上におけるシナプスの空間分布と、そ の解剖学的特性が有する生理学的機能である。 オープンリソースであるコ ネクトームデータを利用して、画像処理・解析にはAI搭載ソフトであるAivia(Leica社) の利用を試みた(ニコンイメージングセンターに導入済)。データ容量が非常に大きいため、解析用PCのGPUをグレードアップするなどの対策を行った。Aiviaによる最先端の深層学習をベースとしたセグメンテーション機能を活用するため、開発チームとのディスカッションを行なっている。 また、単一ニューロン神経突起膜電位イメージングを実現するため、超高速三次元ライトシート顕微鏡(ニコンイメージングセンター・三上秀治教授主導で開発)の適用における条件検討を行なっている。ここではイメージングと電気生理学が同時に可能な実験台を確立した。現在までに、空間的に重なり合う複数の細胞体を弁別可能な空間分解能において、少なくとも100vol/sでイメージングを行うことが可能であることを確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
大容量のコネクトームデータを画像処理・解析するために、PCのスペックをグレードアップさせる必要性があり、ソフトウェアの開発チームと相談する必要があったものの、手作業でセグメンテーションを行う時間とコストを縮小させるための大きな前進であった。また、所属するイメージングセンターにおいて3次元的な膜電位イメージングを実現するための光学技術を確立しつつあり、当初の計画以上の進展が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
Aiviaを活用することで、シナプス接続について解析済みの運動ニューロンDE3-Rに収束する多機能性ニューロン群(51個)の中から、遊泳と這行の2種類の行動に共通して動員される多機能性ニューロン群を抽出し、電子顕微鏡画像から トレースし、その3次元形態を明らかにする。それら多機能性ニュ ーロン群の神経突起上のシナプス接続を網羅的に探索し、前シナプスニューロンを遡ってトレーシングすることで同定する。 また、超高速ライトシート顕微鏡を利用した膜電位感受性色素の注入による単一ニューロン神経突起膜電位イメージング法を確立し、神経突起上での時空間動態を定量化に取り組む。仮想遊泳と仮想這行において、多機能性介在ニューロンの神経突起レベルにおける膜電位動態を可視化するために、光学系の高分解能化にも取り組む。
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