研究課題/領域番号 |
21K15141
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
岡畑 美咲 甲南大学, 自然科学研究科, 特別研究員 (20880561)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 線虫 / C. elegans / 高温順化 / hadh / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
これまでに、C. elegansの25度から15度への温度馴化の研究から、C. elegansの低温馴化には頭部温度受容ニューロンのK+チャネルが関わることを見つけたが、15度から25度への高温馴化のメカニズムについては解析が進んでいなかった。そこで、高温馴化を制御するメカニズムを解明するために、これまでに、 15度から25度への温度上昇時に発現が変動する遺伝子を次世代DNAシーケンサーを用いたRNAシーケンス解析により、網羅的なスクリーニングを行なった。ヒトのミトコンドリアマトリックス内において、脂肪酸代謝のβ酸化経路で働くHADH (3ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素)の線虫ホモログの遺伝子は温度変化時に発現が顕著に上昇しており、この遺伝子の変異体は高温に馴化するのに時間がかかる異常を示した。当該年度はHADHが高温馴化を制御する機能ニューロンの絞り込みを行った。機能ニューロンは約13種のニューロンに絞り込んでいたため、個々のニューロンで特異的にHADH遺伝子を発現させたhadh変異体の高温馴化を測定し、異常が回復するかを調べたが、個々のニューロンで発現させてもhadh変異体の高温馴化異常は回復しなかった。一方で、hadh遺伝子の発現を全神経細胞他色地図系統neuropalを用いて調べたところ、これまでに発現が報告されていなかった尾部のニューロンが含まれていた。これまでに、hadhは線虫においてもミトコンドリアに局在することがわかったため、最新の温度インディケーターをミトコンドリアで発現させ、飼育温度依存的なミトコンドリアの温度変化を定量化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度はHADHが高温馴化を制御する機能ニューロンの絞り込みを行い、機能ニューロンを約13種のニューロンに絞り込んでいたため、個々のニューロンで特異的にHADH遺伝子を発現させたhadh変異体の高温馴化を測定し、異常が回復するかを調べたが、個々のニューロンで発現させてもhadh変異体の高温馴化異常は回復しなかった。一方で、hadh遺伝子の発現を全神経細胞他色地図系統neuropalを用いて調べたところ、これまでに発現が報告されていなかった尾部のニューロンが含まれていた。これまでに、hadhは線虫においてもミトコンドリアに局在することがわかったため、最新の温度インディケーターをミトコンドリアで発現させ、飼育温度依存的なミトコンドリアの温度変化を定量化することができた。これらのことから、HADH遺伝子の機能細胞の絞り込みには苦戦しているが、新しい発現細胞を同定するなどの結果も得られているため、概ね順調にすすんでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析から、ヒトのミトコンドリアマトリックス内において、脂肪酸代謝のβ酸化経路で働くHADH (3ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素)の線虫ホモログの遺伝子は温度変化時に発現が上昇しており、hadh遺伝子はニューロンで機能することで高温馴化を制御することがわかってきたが、機能ニューロンはまだ同定できていない。そのため、本年度はHADHが高温馴化を制御する機能ニューロンの絞り込みを行う。機能ニューロンは約13種のニューロンに絞り込み、個々のニューロンで特異的にHADH遺伝子を発現させたhadh変異体の高温馴化を測定したが、変異体の異常が回復しなかったため、複数のニューロンで同時にhadhが機能することで高温順化が成立する可能性が考えられたため、hadh変異体の様々なセットのニューロンでhadhを発現させ、回復実験を行う。さらに、hadhは線虫においてもミトコンドリアに局在するため、温度耐性の変異体のミトコンドリアで温度インディケーターを発現させ、飼育温度依存的なミトコンドリアの温度変化を定量化することで、ミトコンドリア温度と特定の分子経路との関係を解析する。
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