研究課題/領域番号 |
21K15147
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
六車 香織 中部大学, 応用生物学部, 助手 (70825728)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 軟骨魚類 / 色覚 / 神経回路 / 網膜 / 電子顕微鏡法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、軟骨魚類網膜における色覚に関連した神経回路の解明である。軟骨魚類は現生の脊椎動物の中で最も古くに分岐した顎口類であるが、サメ類とエイ類で色覚のパターン (視細胞の構成) が大きく異なることが知られている。本研究によって軟骨魚類における桿体視細胞および錐体視細胞の色の識別に関する機能の一端が明らかになれば、脊椎動物における色覚の進化に関してより深い理解につながることが期待される。 昨年度に引き続き、これまでに桿体視細胞と複数タイプの錐体視細胞が報告されているヤッコエイ Neotrygon kuhlii、および桿体視細胞のみが見つかっているネコザメHeterodontus japonicusを実験魚として解析を進めた。まずは視細胞の神経終末や接続する細胞の形態について超微細構造学的観察を行うため、透過型電子顕微鏡 (TEM) 観察に向けた標本作製の条件検討を行った。その結果、TEM観察に耐えうる良好な状態の標本を得ることができ、両種において視細胞と双極細胞のシナプス接続を確認できた。現在各細胞の形態について詳細な解析を進めているが、電子線照射によるダメージのため、長時間の観察を行うことが難しく、現在使用装置に適した観察試料の作製法について検討を行っている。 上記に並行して、ヤッコエイの標本を用いて、免疫組織染色法により軟骨魚類網膜に有用な桿体型・錐体型双極細胞マーカーの探索を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度中に視細胞の構成が異なる 3 種 (ヤッコエイ、イヌザメ Chiloscyllium punctatum、ネコザメ) について、視細胞のシナプス終末をはじめとした超微細構造の観察が可能な試料作製方法を確立し、軟骨魚類網膜に有用な桿体・錐体型双極細胞マーカーを特定する予定であったが達成できなかった。予定されていた研究項目を遂行できなかったため、進行はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も引き続き、ヤッコエイ、イヌザメ、ネコザメをはじめとした軟骨魚類網膜における視細胞のシナプス構造について超微細構造の解析を進める。TEM観察の際、電子線照射時のダメージにより詳細な解析を行うことができなかったため、使用するグリットや支持膜などの条件についてさらなる最適化を行う予定である。 合わせて免疫組織染色により、軟骨魚類網膜に有用な桿体型・錐体型双極細胞マーカーの探索を行う。有効なマーカーが見つかり次第、免疫電子顕微鏡法を利用して網膜ニューロンの標識方法を確立し、各視細胞がどのようなタイプの双極細胞に接続しているのか調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、参加を予定していた国際学会が延期になり、旅費を繰越すこととなった。合わせて一部の研究項目の遂行ができなかったため消耗品代等を繰り越すこととなった。当該予算額については、引き続き次年度においてTEM観察用試料作製および免疫組織染色等の実験、学会への参加費に使用する予定である。
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