研究課題/領域番号 |
21K15151
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
屋宜 禎央 九州大学, 農学研究院, 助教 (50878080)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | リーフマイナー / モグリチビガ科 / ツヤコガ科 / 潜葉習性 / 種分化 |
研究実績の概要 |
植食者である多くの蛾類の中でも原始的なグループは、潜葉性といった内食性の獲得が多様化に寄与したと考えられている。また、昆虫の多様化の主要な要因として地理的隔離や寄主転換がよく知られている。しかし、それだけでは十分に多様性の要因を説明できない場合がある。申請者らはモグリチビガ科やツヤコガ科などの潜葉性小蛾類の調査で、同じ植物種を寄主とする複数種の中には、たがいに近縁でかつ同所的に共存するものがいることをいくつかの植物種において確認した。これらの幼虫は、それぞれが残す潜孔の形状や、植物の利用部位といった潜葉習性に違いがあることから生態的種分化の一例である可能性がある。そこで、本課題では寄生蜂と共生微生物との関連について着目し、各潜葉習性の適応的意義を明らかにすることを目指す。 一方で、小蛾類は、体サイズが小さいこと、種間の形態差が小さいこと、他の蛾類で有効なライトトラップで採集しにくい場合があることなどから、未記載種が多く含まれており、正確な種多様性の解明から行う必要がある。 2021年度は、主にブナ、コナラ属などを寄主とする複数種について、北海道、広島、対馬、九州でサンプリングを行い、実際にブナやアベマキなどから同所的に複数種の幼虫を採集した。これらの幼虫は年1化のものが多く、ひとまず成虫を得るために現在飼育中であり、現在一部が羽化しつつある。また、形態観察やDNA解析を行うために得られたサンプル数に応じて適宜液浸サンプルを確保した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、サンプリングを主に行った。ブナやコナラ属といった同じ植物種を同所的に利用する複数の近縁な潜葉性小蛾類のサンプリングを、日本各地で行い、実際にブナやアベマキなどを寄主する幼虫を得た。ただ、本州東部など十分にサンプリングへ行けなかった地域、ミズナラを寄主とする複数種などサンプリングが不足している種もあるのでやや遅れていると判断した。 得られた幼虫は現在飼育中であり、羽化した成虫から順次標本を作成し、形態の観察やDNAバーコーディング等によって正確な種多様性の解明を進めている。 また、採集した一部の幼虫は形態観察用、DNA解析用にそれぞれ液浸サンプルを確保した。幼虫の形態観察には生物顕微鏡による観察のほかナノスーツ法による走査型電子顕微鏡での表面の微細構造の観察を行う予定で、近縁で採集のしやすいサンプルを用いて予備的な観察を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度もサンプリングを継続して行う。サンプリングが不十分である本州などでの調査を新型コロナウィルス感染症の社会的状況に応じて行う。現在確保しているサンプルを用いてDNA解析を行うとともに幼虫形態を含む詳細な形態の観察を継続して行う。 また、寄生蜂についても羽化次第DNAバーコーディングを行い、適宜形態によるできる限りの同定を目指す。いくつかの幼虫に関しては、16SrRNA菌叢解析を試みて共生微生物の確認を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の社会的状況から、サンプリングを行うことができなかった地点があった。また、予期していなかった実験室で起こった問題によりDNA解析の計画の中断・変更が必要となった。したがって次年度で不足しているサンプリングやDNA解析を行う予定である。
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