研究課題/領域番号 |
21K15154
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研究機関 | 宮崎国際大学 |
研究代表者 |
田川 一希 宮崎国際大学, 教育学部, 講師 (90830399)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 植物の運動 / 誘導防御 / 花食者 / 食虫植物 |
研究実績の概要 |
モウセンゴケ属は花周辺への接触刺激に応答して、2-10分ほどで花を閉鎖する。本研究の目的は、接触刺激に応答した花閉鎖がスペシャリスト植食者に対する防御として効果的である、という仮説を検証することである。仮説の検証のために(1)花閉鎖がスペシャリスト植食者による繁殖器官の食害を抑制する効果を定量化すること、(2)日本各地・東南アジア地域で食害レベルと花閉鎖形質の相関を明らかにすることを目指している。 2021年度は(1)について、国内で採集したトウカイコモウセンゴケとモウセンゴケトリバを用いた行動実験を行い(n = 29)、モウセンゴケトリバの食害に応答してトウカイコモウセンゴケの花が閉鎖することを確かめた。食害を受けた花を栽培し種子を得ることで、食害の有無・食害を受けた部位と繁殖成功度との関係を解析した。また、食害に応答した花閉鎖と概日時計に基づく花閉鎖について、閉鎖速度を定量化し比較した。一連の実験から、トウカイコモウセンゴケが食害に応答して素早く花を閉鎖し、花閉鎖は繁殖器官の食害を抑制する傾向が見いだされた。しかし、個体数が未だ少ないため追加の実験が必要である。(2)については、所属機関で県外への出張が全面禁止となり、実施できなかった。 2022年度以降は、さらに実験個体数を増やし、一般的な傾向を確認する。また、トウカイコモウセンゴケに麻酔処理を施し、閉鎖しない花を作出する。閉鎖しない花を用いた行動実験を実施し、防御の効果をより明確に判断できるようにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大によって出張が全面禁止となり、2021年度に予定していたサンプリングおよび野外調査は、1回を除きキャンセルとなった。1回のサンプリングで得たトウカイコモウセンゴケとモウセンゴケトリバを用いて実験を試みたが、十分なサンプル数を得ることはできなかった(n = 29)。その要因としては、本務校の時間割都合により、実験可能な日が1週間のうち1-2日に限られ、モウセンゴケトリバの蛹化というタイムリミットまでに十分な実験回数を確保できなかったことが挙げられる。このような問題点はサンプリングを複数回行うことで解決する予定だったが、出張禁止の影響でそれが叶わなかった。 サンプル数は少ないながらも、トウカイコモウセンゴケがモウセンゴケトリバによる食害に応答して素早く花を閉鎖すること、花閉鎖は繁殖器官の食害を抑制することが見いだされた。これらの結果をまとめ、日本植物学会および日本生態学会で経過報告としての発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
他県への出張が可能となった場合は、岡山県でトウカイコモウセンゴケとモウセンゴケトリバを採集し行動実験を行う。また、ジエチルエーテルを用いたトウカイコモウセンゴケの花閉鎖運動の抑制方法を確立させる。花閉鎖運動を抑制した花についても、モウセンゴケトリバを用いた行動実験を行う。閉鎖運動を行う花と閉鎖運動を抑制した花について、繁殖器官の食害レベルと種子生産数を比較し、花閉鎖運動の防御効果を定量化する(n = 50を目標とする)。2022年度も2021年度に引き続き、本務校の時間割都合で、実験を行うことができる日が1週間のうち数日に限られる。しかし、複数回のサンプリングが可能であれば、目標のサンプル数を確保できる見通しである。夏までの実験結果をまとめ日本生態学会で発表すると共に、論文の国際誌への再投稿を行う。他県への出張が不可能な場合は、宮崎県内の自生地において、モウセンゴケ属の花閉鎖形質について基礎的なデータを収集する予定である。 2022年度に予定していた海外への調査は困難な見通しである。そのため、2023年度以降の実施を目指して調整を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は出張が全面禁止となり、予定していたサンプリング・野外調査を実施できなかった。そのため、旅費としての支出がなかった。2022年度、県外への出張が許可された場合は、岡山県・沖縄県・愛知県の自生地で複数回のサンプリング・野外調査を行う予定である。
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