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2021 年度 実施状況報告書

菌類の子実体発生様式から共通形質と形態多様化のプロセスを探る

研究課題

研究課題/領域番号 21K15155
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

橋本 陽  国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 特別研究員 (10824435)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワード系統進化 / ontogeny / 分子系統解析 / 子のう菌門
研究実績の概要

形態的に著しい多様化が進んでいる菌界では共通祖先から派生した単系統群内での形態な共通性を見いだすことが困難であり、目や科レベルの共通派生形質の推定や探索は常に困難を極めている。特に、菌界最大のグループである子のう菌門の高次系統における単系統性の定義には分子系統解析の結果が重視されてきたが、この手法は系統の類縁性を再現するに過ぎず、多様化における根源的な共通性や違いを見いだすためには異なる手法の必要性が考えられた。
本研究では従前の科の概念にはなかった子実体発生様式の過程に注目した新たな系統指標の尺度を与え、以下の課題を解決目標とする。① 形態が著しく多様化した科の共通性の探索、② 収れん進化した科の根源的な違いを示す。
初年度はコロナの影響で出張が制限されている中で予定通りの調査を進めることはできなかった。そこで子のう菌門の無性世代でしばしば観察される極めて単純化した酵母様形質に注目して単系統群内での酵母様形質の形成様式と菌糸発達様式の形態学的類型化や系統群間での形態学的差異の類型化を中心に研究を進めた。
結果として、分離した酵母様サンプルがおよそ700株、子実体由来の標本サンプルがおよそ120標本収集された。それらのうち酵母サンプルについてはリボソームDNA配列ITSおよびLSU 領域の決定し、子実体由来の標本サンプルは半数近くの決定を終えた。
器材調達が遅れたため、切片観察は当初の予定から大幅に遅れたが、染色技術の最適化を行うことで次年度以降の効率的な切片観察をする予備データを得ることができた。類似した酵母様細胞の形成において主にリボソーム配列に基づく分子系統解析の結果と先行研究の観察に基づき、酵母様細胞形成の発達様式について系統ごとの形態学的な類型化を試みている。
本研究課題の達成度は、予定進捗に変更はあったものの全体としては進行していると判断した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本課題は5年間の計画で進めている。初年度である本年度は老朽化した器材の更新と観察用の試料の収集を進める予定であった。しかしながら、コロナの緊急事態宣言などにより、器材の調達や国内で採集調査が滞ってしまった。そこで本年度は当初の計画では2,3年度に予定をしていた酵母細胞の形成と菌糸発達様式に切り替えることで対応した。研究の進捗は前後したものの、全体としては概ね順調に進むことになった。
出張が制限されている中で予定通りの調査を進めることはできなかったが、分離した酵母様サンプルがおよそ700株および子実体由来の標本サンプルがおよそ120標本収集することができた。それらのうち酵母サンプルについてはリボソームDNA配列ITSおよびLSU 領域の決定することができ、子実体由来の標本サンプルは半数近くの決定を終えた。ミクロトームの老朽化とその更新は前述のように器材調達が遅れたため、切片観察は当初の予定から大幅に遅れたが、染色技術の最適化を行うことで次年度以降の効率的な切片観察をする予備データを得ることができた。加えて、予定を変更して進めた酵母様菌類の観察ではクロイボタケ目、カプノジウム目、ケートリチウム目における類似した酵母様細胞の形成において主にリボソーム配列に基づく分子系統解析の結果と先行研究の観察に基づき、酵母様細胞形成の発達様式について系統ごとの形態学的な類型化を試みている。
以上のことから、本研究課題の達成度は、予定進捗に変更はあったものの全体としては進行していると判断した。

今後の研究の推進方策

菌界全体の網羅的な子実体発生様式を類型化するためには観察用試料の増強と観察、および核遺伝子のマーカー配列を継続的に決定する必要がある。特に本年度で最適化した菌類の切片用の染色技術により無色の細胞についても効率的で明瞭な観察が可能になったため、予備サンプルを含めて早急に切片作成を行う。核遺伝子のマーカー配列についても核リボソーム配列だけでは高次系統の推定には不十分なため、単一コピー領域の決定を進める。子実体発生様式と遺伝子解析の結果を包括的に捉えた上で、子のう菌門の形態形質の進化パターンを明らかにする。次年度では各系統内における子実体発生様式のパターンを論文として公表することを目標とする。
COVID-19 の影響は拭えないものの、今年度は初年度に調査できなかった採集調査を継続して行うことでサンプルを増やす事に注力したい。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] A phylogenetic assessment of Endocalyx (Cainiaceae, Xylariales) with E. grossus comb. et stat. nov.2022

    • 著者名/発表者名
      Delgado Gregorio、Miller Andrew N.、Hashimoto Akira、Iida Toshiya、Ohkuma Moriya、Okada Gen
    • 雑誌名

      Mycological Progress

      巻: 21 ページ: 221~242

    • DOI

      10.1007/s11557-021-01759-9

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] 地下生担子菌Hymenogaster citrinus (ハラタケ目ヒメノガステル科) の 日本初記録2022

    • 著者名/発表者名
      Ohmae Muneyuki、Yamamoto Kohei、Hashimoto Akira、Ohkuma Moriya
    • 雑誌名

      Truffology

      巻: 5 ページ: 33~40

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Notes on Some Interesting Sporocarp-Inhabiting Fungi Isolated from Xylarialean Fungi in Japan2021

    • 著者名/発表者名
      Sa’diyah Wasiatus、Hashimoto Akira、Okada Gen、Ohkuma Moriya
    • 雑誌名

      Diversity

      巻: 13 ページ: 574~574

    • DOI

      10.3390/d13110574

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] “Uncultured fungus”との死闘 -eDNA の実体を捉える-2021

    • 著者名/発表者名
      橋本陽
    • 学会等名
      日本菌学会第65回大会

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公開日: 2022-12-28  

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