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2023 年度 実施状況報告書

電気合成微生物活動仮説の検証:集積培養とオミクス解析で解明する新微生物代謝機能

研究課題

研究課題/領域番号 21K15156
研究機関国立研究開発法人海洋研究開発機構

研究代表者

鹿島 裕之  国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究開発プログラム), 研究員 (70780914)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード電気合成 / 光合成 / 化学合成 / カソード反応 / ガルバニック腐食 / 微生物電気化学 / 現場反応実験 / 電気化学
研究実績の概要

今年度は、昨年度に引き続き現場電気集積培養実験で得られた集積微生物群集のメタゲノム解析を実施して電気合成代謝経路の理解を進めたとともに、現場電気集積培養実験の実施範囲を広げるための方法論の改良を行った。
これまで、ガルバニック腐食反応を利用して外部電源に頼らず不活性電極のカソード分極を作出する装置を開発し、これを使って深海底を含む海洋環境において電気合成微生物の現場電気集積培養を行ってきた。今年度はこの装置を改良し、淡水環境でも安定してカソード分極を引き起こして現場電気集積培養を行うことができる方法を開発した。具体的には、従来の装置では河川など淡水環境では安定したカソード分極が起きないことが分かっていたが、この原因は電気伝導度の低い淡水溶液中では金属腐食アノードでのガルバニック腐食反応の進行が妨げられることでカソード分極強度が制限されることに因るものと見出した。さらに、この問題を解決する方法を検討し、内部を模擬海水などの高電気伝導度電解液で満たし外部との液絡を設けたアノード槽を設けその中に金属腐食アノードを配置することで、淡水中でも安定してカソード分極を維持できるようになった。この改良により、現場電気集積培養実験を実施して電気合成微生物の探索を行う環境の範囲が、河川などの淡水環境に拡張できる見込みとなった。この、外部電源に頼らず不活性電極のカソード分極を作出する方法は、今年度の成果を含めて特許化の準備を進め、来年度初頭に特許出願する見込みである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

本課題では、複数の環境サイトにおいて現場電気集積培養実験を行い、それぞれの環境サイトで電子供給依存的に優占する集団の系統・代謝機能を比較することで、環境と電気合成微生物活動の多様性について考察を試みることを計画していたが、課題の1年目と2年目に新型コロナウイルス感染症の影響で予定していた現場電気集積培養実験が実施できなかった。今年度は社会活動制限が無くなり現場電気集積培養実験を進めることができたが、例えば深海底サイトでの現場実験は現場培養サンプルの回収に至っていないなど、現場電気集積培養実験の進捗が遅れている。

今後の研究の推進方策

進捗が遅れている現場電気集積培養実験を実施し、回収したサンプルのメタゲノム・メタトランスクリプトーム解析を実施し、電気合成環境依存的に集積する微生物集団の系統と代謝機能を解析する。サンプルの解析は、これまでに成功した沿岸環境サイトサンプルの解析方法を適用する。深海底での現場実験は作業機会が限られ、年度内にサンプル回収ができない可能性もあるため、アクセスが容易な環境での現場実験も実施する。具体的には、今年度の技術改良で淡水系での安定したカソード集積培養が可能になったため、河川または湖沼での現場実験を実施したい。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症の影響で、昨年度までに予定されていた海洋環境サイトでの現場培養実験の多くが中止・延期になっており、この遅れを取り戻すために今年度に現場培養実験を実施したが、当初予定より実験の規模に至っていないため、解析サンプル数が大幅に少なく、解析のための経費を使用しなかった。
今後は、次年度に現場培養実験を実施して得られるサンプル数を見極めたうえで、この解析に使用する物品・消耗品を購入する。そして、次年度内に当初予定した規模の現場実験の実施が難しい見込みとなった場合は、これまでの現場実験で集積を確認した電気合成微生物候補の更なる解析・分離培養を目指し、このための実験室での電極集積培養実験を集中して行うこととし、そのための物品を購入する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)

  • [国際共同研究] University of Urbino(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      University of Urbino
  • [学会発表] 潮汐周期と同期した深海熱水噴出孔での放電現象と電気合成微生物生態系2023

    • 著者名/発表者名
      山本正浩、高木善弘、小林瑠那、鹿島裕之、津田美和子、谷崎明子、中村龍平、高井研
    • 学会等名
      JpGU 2023
    • 招待講演
  • [学会発表] 深海底で電気を食べる微生物を探索する;農・工分野から踏み入れる海洋現場研究開発のススメ2023

    • 著者名/発表者名
      鹿島裕之
    • 学会等名
      第2回BX・GX国際教育研究拠点セミナー ~物質・エネルギー循環(生態系、炭素循環) ~
    • 招待講演
  • [学会発表] 深海熱水噴出域における電気微生物生態系の探索2023

    • 著者名/発表者名
      山本 正浩、川田 佳史、高木 善弘、下新井田 康介、設樂 真莉子、谷崎 明子、鹿島 裕之、平井 美穂、高谷 雄太郎、野崎 達夫、笠谷 貴史、高井 研
    • 学会等名
      日本微生物生態学会第36回浜松大会アジア微生物生態シンポジウム第13回浜松大会
    • 招待講演
  • [学会発表] Metagenomic characterization of novel electroactive microorganisms enriched from stibnite mine wastewater2023

    • 著者名/発表者名
      Natsuko Hamamura, Hiroyuki Kashima, Satoshi Mitsunobu
    • 学会等名
      Goldschmidt2023
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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