研究課題/領域番号 |
21K15164
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
西尾 治幾 滋賀大学, データサイエンス学系, 助教 (60802593)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | トランスクリプトーム / エピゲノム / 進化 |
研究実績の概要 |
研究代表者らは、シロイヌナズナ属の多年草であるハクサンハタザオにおいて、抑制型ヒストン修飾が遺伝子発現の変化を後追いするように季節変化することで発現変化の記録となり、結果として植物が経験した長期的な環境の記憶として働くことを示唆する結果を得ていた(Nishio et al., 2020 Nat. Plants)。 このヒストン修飾による発現記憶の仕組みは、生物進化の過程で、いつ、どのようにして生じたのであろうか。昨年度より引き続き、進化的系譜を代表する複数植物種(被子植物門のハクサンハタザオ、ヤブツバキ、裸子植物門のアカマツ、ヒカゲノカズラ植物門のクラマゴケ、シダ植物門のコシダ、ゼニコケ植物門のオオジャゴケの6種)について、兵庫県多可郡多可町の思出川沿いに生育する自然個体を対象として、定期的なサンプリングおよび分子実験を継続している。 特にハクサンハタザオについて発現記憶の仕組みを調べるため、RNA-seqにより短期的および長期的な気温変化に応答する遺伝子を全遺伝子レベルで調べた。その結果、ほとんどの遺伝子が短期間(24時間以内)の気温変化に応答し、少数の遺伝子が長期間の気温変化に応答することが分かった。詳細な情報解析を行なったところ、長期的な気温変化に応答する遺伝子には防御応答に関わる遺伝子が多いことが分かった。防御応答遺伝子群において、H3K27me3は季節的に変化することが分かっているので、感染・食害防御は花成と同様に長期エピジェネティック制御の対象であることが分かる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
定期的な野外サンプリングは問題なく継続できており、研究室内での実験も行えている。
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今後の研究の推進方策 |
Illumina社においてHiSeq2500のサービス終了、およびHiSeqXのフローセルおよびRun試薬の原料枯渇に伴った生産停止が報告されている。それに伴い、これまでHiSeq2500でシーケンスを行ってきたが、NovaSeq6000などの新しい機種に変更する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
Illumina社においてHiSeq2500のサービス終了、およびHiSeqXのフローセルおよびRun試薬の原料枯渇に伴った生産停止が報告された。それに伴い、これまでHiSeq2500でシーケンスを行ってきたが、NovaSeq6000などの新しい機種に変更する必要がある。現在、機種選定およびシーケンス条件の検討を行っており、準備が整い次第、順次シーケンスを発注する。
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