研究課題/領域番号 |
21K15168
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
水元 惟暁 沖縄科学技術大学院大学, 進化ゲノミクスユニット, リサーチフェロー (60885672)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | シロアリ / 群れ行動 / 集団行動 / タンデム / 系統種間比較 / アリ / トラッキング / 行動解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、シロアリのタンデム歩行行動をモデルシステムとして、昆虫の接触に基づく群れ行動ルールを解明することである。当該年度はコロナウイルス感染症による厳しい渡航制限があったため、日本国内のシロアリ種のタンデム歩行行動の行動解析を中心として行った。 まず本研究の前提として、シロアリがタンデム歩行行動において視覚情報を用いているかどうかの検証を行った。ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)とイエシロアリ(Coptotermes formosanus)の2種において、明条件・暗条件の両方においてタンデム歩行の観察・解析を行い、両種において個体間の相互作用においては視覚情報を用いていないことをサポートする結果を得た。視覚情報はむしろタンデムを行うタイミングを決めるために使用していると考えられる。 次に、ヤマトシロアリの同性タンデムの行動解析、および文献調査と系統種間比較を用いたシロアリにおけるタンデム歩行の進化プロセスの解析を行った。その結果、シロアリにおけるタンデムの行動ルールはシロアリの祖先から保存されているものであり、雌雄共に完全な行動ルールを有するという、本研究で開発予定の一般的なモデルの前提をサポートする結果が得られた。 最後に、解析をアリのタンデム歩行にまで広げ、トゲオオハリアリ(Diacamma cf indicum)のタンデムを半自動でトラッキングするシステムを構築した。トゲオオハリアリの結果はシロアリの結果や他のアリ(Temnothorax rugatulus)と比較解析する。 以上の結果は、すでに論文として執筆している。またデータ解析を通じて、本研究と強く関連する論文の出版を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画時の予測通り、初年度は海外調査ができなかったため、コウグンシロアリの行動観察には至らなかった。しかし、国内のシロアリやアリの行動解析を通じて得られたデータをもとに、既に3報もの論文を準備している。これらはどれも非常に質が高く、インパクトのある論文になると期待される。 この他にも、GlyptotermesやPericapritermesといった、これまでにタンデムが観察されたことのない属の種のタンデムの動画データも取得できた。これにより、コロナの影響で海外調査が次年度も実施できなくても、高い生産性を維持できると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はマレーシアでのコウグンシロアリの観察を行いたい。これに並行して、1) 昨年のデータの論文化を行う。2) より解像度の高い国内種のタンデムの動画を得て、タンデム時の各体のパーツの動きを解析する。3) タンデムの動画を更に多くの種から得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で、ボルネオ島での野外調査が行えなかった。それに伴い、次年度使用額が生じた。翌年度こそはボルネオ島での野外調査を行いたい。下半期に行う計画を立てている。
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