研究課題/領域番号 |
21K15174
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐々木 智彦 京都大学, 総合博物館, 准教授 (40826244)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 古人口学 / 先史時代 / 寿命 |
研究実績の概要 |
本研究では、犬歯歯髄腔の狭窄度合を年齢指標とした新しい手法を用いて、縄文時代や弥生時代の人々の寿命(主に成人後の余命)を男女別に推定することを最終目標としている。推定の精度を上げ、かつ時代や地域ごとの変化に至るまでを考察対象とするためには、できるだけ多くの標本をできるだけ多くの遺跡から抽出しなければならない。本年度は、九州から関東にかけての縄文・弥生時代遺跡について文献調査を行い、それぞれの遺跡の年代と人骨の出土状況、並びに現在の人骨保管状況を調べた。東京大学総合研究博物館に収蔵されている弥生時代人骨については、本年度、実際の収蔵状況を確認し、年齢分析に用いる下顎犬歯標本の選定を行った。一方、一般に古人骨標本は、寛骨などの性差が顕著な部位を伴わない限り、性別は不明である。当時の余命を男女別に推定するためには、何らかの性別情報を(理想的には年齢分析の対象である下顎犬歯そのものから)引き出し、余命推定の計算に組み込む必要がある。この点に関し、本年度は犬歯のサイズにおける性的二型に着目した研究を行った。ベイズ定理の応用により、性別が不明な古人骨・化石集団の計測データから犬歯サイズの平均性差を推定する手法を考案し、その計算プログラムを開発した。これにより個体ごとの性別事後確率が導出可能となり、先史時代人集団の年齢プロファイルを推定する際に、性別情報を計算に組み込む理論的・技術的基盤を構築することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
古人骨集団の年齢プロファイルを推定するための計算プログラムの構築や年齢分析の主対象である下顎犬歯のCTデータを解析するための準備は順調に進んでいるが、本年度は遠隔地域への移動が困難であったため、下顎犬歯CTデータの収集がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度初めには東京大学総合研究博物館の弥生時代人の下顎犬歯をCT撮像し、データを取得・解析する予定である。その後も引き続き、他研究機関の縄文・弥生時代人についてCTデータの収集を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
CTデータ取得のための関係研究機関への往復を次年度以降に持ち越しとしたため、主にその費用が繰り越されている。次年度以降、同じ目的に使用する予定。
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