研究課題/領域番号 |
21K15175
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡部 裕介 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (90889122)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 日本列島 / 縄文人 / 渡来人 / 混血 / 集団ゲノム学 / 集団構造 / 日本列島人 |
研究実績の概要 |
2022年度は、昨年度までに検出した現代日本人ゲノム中の20万個の縄文人由来変異を用いて、日本人の成立史を調べる解析を行った。現代日本人の北海道を除く46都府県の全ゲノムSNP情報を用いて縄文人由来変異保有率を調べたところ、現代日本の沖縄や東北地方、鹿児島および島根などの地域集団では縄文人由来変異の保有率が高く、近畿や四国では縄文人由来変異の保有率が低いことが明らかとなり、現代日本人の縄文人と渡来人の混血の程度には地理的な勾配があることが示された。昨年度までに縄文人由来変異を遺伝的マーカーとして縄文人および渡来系弥生人の全ゲノムSNPのアリル頻度を推定する解析を行ってきたが、本年度はこのアリル頻度情報と日本人のGWASの解析結果を組み合わせて、縄文人と渡来人の表現型を復元する解析を行った。この結果、縄文人は遺伝的に低身長で血糖値や中性脂肪が高くなりやすいこと、渡来人は遺伝的に高身長で好酸球数やCRP値が高くなりやすいことが明らかとなった。これら縄文人および渡来人の特徴的な遺伝形質は、それぞれの生業形態に適応した結果生じたのではないかと考察した。さらに、現代日本人の一部の表現型に地域差がある理由は、「縄文人と渡来人がそれぞれ特徴的な表現型を持っており、現代における両集団の混血の程度が地域間で異なるため」であると考えられた。 本研究で得られた知見から、「現代日本人の遺伝子型と表現型の地域的多様性は、先史時代の本土日本の各地域の人口規模の違いに起因する、地域間の縄文人と渡来人の混血の程度の違いにより生じた」という本土日本人の集団形成モデルを提唱し、国内学会および査読付き国際誌で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに検出した縄文人由来変異を活用した現代日本人の地域差が生じた過程を解明する解析に関して一定の成果が得られ、学会発表や国際誌で報告することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
現代日本人の各県の縄文人由来変異の共有率や多様性の度合いを指標として、縄文人が日本列島に拡散した過程を明らかにするための解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の過程で昨年度までに既に出力・保存されていたデータのみで十分に解析を行えることがわかったため、本年度中は分析やデータ保存のための機器を購入する必要がなかった。 次年度はより大規模な解析を行うことを計画しており、解析やデータ保存のための物品費、研究成果を発表するために必要な出張旅費、論文掲載にかかる費用等に使用する予定である。
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