研究課題/領域番号 |
21K15181
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村上 知成 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (50827087)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 視覚経路 / マウス / 発達 |
研究実績の概要 |
哺乳類の脳は、階層的かつ並列的な神経ネットワークにより、高度な感覚処理を実現しています。視覚系では、複数の高次視覚野(HVA)が腹側および背側ストリームを構成し、物体の形や動きなどの異なる視覚的特徴を並行して処理しています。高次視覚野は、皮質-皮質結合だけでなく、視床の高次核である外側後核(LPN)からの視床-皮質突起を介して視覚情報を受け取っています。この階層的かつ並列的な視覚ネットワークは、霊長類、げっ歯類、肉食動物に保存されており、視覚情報処理の基本構造と考えられています。発達期において、この複雑な視覚ネットワークは、遺伝子の指示と自発的・感覚的な誘発活動を含む神経活動の両方の助けを借りて形成されます。網膜から一次視覚野に至る視覚経路の発達過程はよく研究されている一方、HVAやLPNを含む腹側および背側経路の配線がいつ形成されるかは、まだほとんどわかっていません。 視覚ネットワークの発達に関する古典的な仮説には、神経結合が下位から上位の領域へと階層的な構造に沿って順次形成されるというボトムアップ理論があります。しかし、この逐次的な戦略は、多数の領域間結合からなる視覚ネットワーク全体を構築するためには非効率的であると考えられます。本研究では、複数の発達段階における自発神経活動の広視野Ca2+イメージングと解剖学的ニューロトレースを用いて、階層的視覚ネットワーク がどのように発達していくのかを調べました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、複数の発達段階における自発神経活動の広視野Ca2+イメージングと解剖学的ニューロトレースを用いて、これまで文献上実証されていない、階層的視覚ネットワークの並列モジュールシナリオを含む発達過程を明らかにしました。機能的結合解析による自発的活動のパターン解析により、生後数日でHVAが成体並みの網膜トピック構造を持つことが明らかになり、この年齢でのHVAの正確な位置を特定することができました。その後、このパターン解析で決めた領野の位置を基に逆行性トレーサーを注入したところ、P5において網膜からV1およびHVAに至る3つのモジュールが明らかになりました。第一は網膜からdLGNを経てV1に至る経路、第二は網膜からpLPNを経て腹側HVAに至る経路、第三は網膜からaLPNを経て背側HVAに至る経路です。これらのモジュールは並行して発達し、網膜の活動をV1およびHVAに伝えていました。その後、V1とHVAの間の皮質接続は、並列モジュールの連結体として出現しました。さらに、モジュール間の接続を確立するためには、モジュールを伝搬する網膜由来の活動が必要であることを明らかにしました。このように、本研究では、視覚ネットワークの発達が、逐次的なボトムアップシナリオではなく、並列的なモジュールシナリオと整合的であることを明らかにしました。ここまでの結果を論文にまとめ、現在学術雑誌に投稿中です。
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今後の研究の推進方策 |
現在投稿中の論文が受理されるよう追加実験を続けていきます。 また今回の実験結果から、発達期における高次の視床核の重要性が示唆されました。今後は発達期における高次視床核の自発活動や遺伝子発現パターンを解析することで視覚経路の発達メカニズムを解明していきたいと考えています。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年は論文作成をメインに行ったため、当初の予定していた研究費の使用額と差が生まれてしまいました。
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