研究課題/領域番号 |
21K15183
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
坂本 寛和 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (10837397)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シナプス / シナプス可塑性 / プレシナプス / 空間記憶 / 超解像イメージング |
研究実績の概要 |
本年度は、海馬を含む脳組織切片における蛍光免疫組織化学染色法を発展させることで、シナプス前部の可塑性に関与することが推定されている分子群(Munc13-1、RIM1およびカルシウムチャネルなど)の超解像顕微鏡(STED・STORM)計測法を確立した。また、水迷路課題や新規環境の学習課題を課して空間学習を成立させた動物の脳標本を用いた実験系の立ち上げを行った。解析の対象として、電気生理学的にシナプス前部由来のLTPが報告されている苔状繊維シナプス(海馬歯状回からCA3野に入力)および貫通繊維シナプス(嗅内皮質から海馬歯状回に入力)の二種類のシナプスに加えて、理論モデルから学習時にシナプス伝達効率の再編が予測されているCA3-CA3シナプスを含めた計三種類の興奮性シナプスに焦点を当て解析を行った。立ち上げた実験システムの妥当性を検証するために、また、シナプス可塑性に伴うシナプス前部可塑性関連分子の量的変動を実証するために、長期のシナプス可塑性(long tern potentiation: LTP)を電気生理学的に誘導した海馬の急性スライス標本を用いて実験を行うことで、いくつかのシナプス前部可塑性関連分子の量が選択的に上昇することを明らかにした。さらに、長期的に新規環境の学習課題を課した動物の脳標本では、特に苔状繊維シナプスおよび貫通繊維シナプスにおいてシナプス前部の可塑性関連分子の量的変動が生じること明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた通り、脳組織切片における蛍光免疫組織化学染色法と超解像顕微鏡計測法を確立することができた。これらの成果をプレプリントサーバーに公開した。さらに、シナプス可塑性を誘導した急性スライス標本や新規環境の学習課題を課した動物の脳標本におけるシナプス前部の可塑性関連分子の変動を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、脳組織切片中のシナプス前部の可塑性関連分子群の超解像顕微鏡計測法が確立できた。また、この手法を用いることで、シナプス可塑性や学習課題によってシナプス前部の可塑性関連分子の量が変動することを明らかにした。今後は、ナノレベルの計測技術の利点を生かし、シナプス前部の可塑性関連分子群間の物理的距離などの空間的特性の変化を解析することで、空間記憶の形成に寄与するシナプス前性の分子メカニズムの解明を行う。
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