研究課題/領域番号 |
21K15194
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
後藤 哲平 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (20772049)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | キスペプチン / 更年期 / ホットフラッシュ |
研究実績の概要 |
更年期の女性において、生殖機能の老化に伴うエストロジェンの急激な減少が自律機能に変調をきたし、更年期障害の原因になると考えられる。生殖中枢キスペプチンニューロンの活動はエストロジェンによって負のフィードバック調節を受ける。また、キスペプチンニューロンの軸索は体温調節中枢を含む自律中枢に見られ、自律機能を上位で制御していると推定される。本研究は、更年期のキスペプチンニューロンの活動変容とホットフラッシュが更年期に顕在化する仕組みを神経回路レベルで解明することを目指している。本年度は、更年期キスペプチンニューロンの活動動態を可視化するため、キスペプチンニューロン特異的にカルシウムインディケーターを発現するマウスに光ファイバーの留置を行い、自由行動下で膣垢像による性周期のモニターおよびキスペプチンニューロンの生体内カルシウムイメージングを行い活動記録した。キスペプチンニューロンの神経活動は一定間隔で数百の近傍のニューロンが同期発火するパルス活動の様式をとることが報告されている。マウス生殖適齢期の回帰する性周期中において、キスペプチンニューロンのパルス活動頻度がダイナミックに変動することがわかった。また、独自に開発したパルスフォーム解析によって、回帰する性周期の各ステージに応じてパルスフォームが変化することを明らかにした。マウス繁殖適齢期である6ヶ月齢、周更年期と考えられる9, 12, 15ヶ月齢時に7日間連続の長期間記録に成功した。繁殖適齢期では生殖機能の指標の一つである性周期が周期的であるのに対し、加齢によって次第に不規則となり、やがて非周期となった。キスペプチンニューロンのパルス活動は多少の変動はあるものの、加齢によってほとんど変動しないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長期間の自由行動下でキスペプチンニューロンの生体内カルシウムイメージング記録に成功したことにより、これまでの報告と異なり、生殖適齢期において回帰する性周期の各ステージでキスペプチンニューロンのパルス活動頻度がダイナミックに変化すること、加えてパルスフォームも変化することを明らかにできた。これらの手法を用いて、加齢マウスにおけるキスペプチンニューロンの活動動態を捉えることに成功した。また、更年期にホットフラッシュが顕在化する仕組みを神経回路レベルで解明することを目指し、生殖適齢期、周更年期マウスの体温中枢の一つである視索前野から偽型狂犬病ウイルスを用いた逆行性シナプストレーシングを行った。
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今後の研究の推進方策 |
更年期にホットフラッシュが顕在化する仕組みを神経回路レベルで解明する目的で、生殖適齢期、周更年期マウスの体温中枢の一つである視索前野から偽型狂犬病ウイルスを用いた逆行性シナプストレーシングに成功した脳について、キスペプチンニューロンとの接続の有無など詳細な解析を進める。周更年期の内分泌状態はかなり変動することが知られているため、膣垢像による性周期のステージングに加えて、内分泌指標の導入を検討する。また、テレメトリーシステムを使って加齢における経時的な深部体温挙動の可視化を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
加齢におけるキスペプチンニューロンのパルス活動の検出において、手術が効率よくでき、さらにかなり長期間にわたって記録できることがわかり、大幅に使用する動物数が減ったため。来年度以降はテレメトリー実験や逆行性トランスシナプス標識実験を計画しており、これら実験に次年度使用額も含めて有効活用する。
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