更年期の女性において、生殖機能の老化に伴うエストロジェンの急激な減少が自律機能に変調をきたし、更年期障害の原因になると考えられる。生殖中枢キスペプチンニューロンの活動はエストロジェンによって負のフィードバック調節を受ける。また、キスペプチンニューロンの軸索は体温調節中枢を含む自律中枢に見られ、自律機能を上位で制御していると推定される。本研究は、更年期のキスペプチンニューロンの活動変容とホットフラッシュが更年期に顕在化する仕組みを神経回路レベルで解明することを目指していた。最終年度は、i) 前年度までに得られた「生殖機能の指標の一つである性周期は生殖適齢期では周期的であるのに対し、加齢によって次第に不規則となり、やがて非周期となるが、生体内カルシウムイメージングによって検出されるキスペプチンニューロンのパルス活動頻度は多少の変動はあるものの、加齢によってほとんど変動しない一方で、パルス活動の強度が低下すること」という成果について、原著論文として公表することができた。 ii) 老齢マウスや卵巣老化を模倣した卵巣除去モデルマウスにおいて、尻尾皮膚体温の急激な上昇が数分間維持されるホットフラッシュ症状を示すことを発見した。これらのマウスは、尻尾皮膚体温の急激な上昇に加えて、心拍も微増することが示唆された。以上より、ヒトのホットフラッシュ現象をマウスで再現・確立できた。
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