研究実績の概要 |
新規オリゴデンドロサイト-神経軸索同時標識法の開発において障害になるのは、意図しない遺伝子発現(リーク)である。我々はまずこのリークの原因を突き止めるため、リークの量をモニターできるベクター(CAG-lox-STOP-lox-GeneA-P2A-GeneB)を作製した。解析を行った結果、P2A配列の後ろ側(3’側)の遺伝子がリークし、5’側の遺伝子はリークしないことが分かった。GFP, mCherry, DTR, ArchTなど様々な遺伝子を試してもこの傾向は変わらず、P2Aの3'側にある遺伝子は種類に関わらずリークすることが分かった。リークを減らすための方法としてP2AベクターなどBicistronicベクターを使わず、それぞれの遺伝子を独立して発現するようなベクター(例えば CAG-lox-STOP-lox-GeneAベクターとCAG-lox-STOP-lox-GeneBベクターをmixして導入する)を使用した場合にはリークは減ることが分かった。また我々はP2A配列の直下に2つ目のlox-STOP-loxを配置したベクターを作製し、リークを劇的に減らすことに成功した。最後に我々は、一般的に使われている発現誘導型複数遺伝子発現ベクターにおいても3’側遺伝子のリークが存在することを確認し、3’側遺伝子のリークは一般的な現象であり、プロモーターの種類の関わらずリークが発生することを明らかにした。本研究の成果は今後の発展が期待されている遺伝子治療やiPS細胞などを用いた再生医療などの戦略を考える際に重要な知見になると考えられる。本研究成果は2022.4.23日にBioRxivに掲載されたdoi: https://doi.org/10.1101/2022.04.23.489261。 今回の研究で、リークの無い遺伝子発現ベクターを決定できたため、令和4年度は実際にウイルスベクターを用いてオリゴデンドロサイト-神経軸索の同時標識を行う。
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