研究成果の概要 |
我々は弱毒化狂犬病ウイルスと組織透明化手法を組み合わせることで、マウス小脳のオリゴデンドロサイトとそれが髄鞘形成している軸索の種類を決定した。この手法により、成獣期のオリゴデンドロサイトの約半数はプルキンエ細胞の軸索に髄鞘形成すること、発生の初期では9割以上の細胞がプルキンエ細胞を選択的に髄鞘形成することを明らかにした(Battulga et al., BioRxiv, 2023)。またCre依存性発現ベクターを用いる際に問題となる遺伝子リークが起こるメカニズムを明らかにした(Osanai et al., Mol Ther Methods Clin Dev, in press, 2024)。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
小脳は運動機能や認知機能に重要な役割を持つ。プルキンエ細胞は小脳皮質における唯一の出力細胞であり、今回我々はこの細胞が発生の初期に選択的に髄鞘形成されていることを突き止めた(Battulga et al., BioRxiv, 2023)。 遺伝子治療では標的細胞のみに遺伝子を発現させるのが理想だが、実際にはリークと呼ばれる標的外での遺伝子発現がみられる(Osanai et al., Mol Ther Methods Clin Dev, in press, 2024)。我々はこのメカニズムの一端を解明した。本研究により、近い将来標的細胞のみを破壊するような遺伝子治療が開発できると考えられる。
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