本研究課題では、神経性セロイドリポフスチン症(NCL)のモデルマウスであるカテプシンD(CTSD)欠損マウスの脳内に蓄積する異常リソソームとオートファジーとの関連について解析を進めている。これまでの研究結果から、CTSD欠損マウス神経細胞内に認められる異常リソソームは、ユビキチンやp62を介した選択的オートファジーによって処理される可能性が示された。そこで、オートファジー機能を障害したAtg7欠損マウスと掛け合わせて解析したところ、CTSD/Atg7両欠損マウスの神経細胞内ではp62顆粒内に異常リソソームが集積することが分かった。また本年度は、CTSD欠損マウス脳を用いて、異常リソソームを濃縮した画分からユビキチン化タンパク質を精製して、異常リソソームのユビキチン化に関わる分子の特定を試みた。本画分からユビキチン化タンパク質を精製することは出来たため、関係するタンパク質の同定を進めている。 本研究課題の中では、CTSD欠損マウスで認めれるp62やNBR1の蓄積が、特に神経系の細胞に特異的であることを明らかにし、これらが集積したリソソームは膜構造が異常である可能性を示すことが出来た。また、オートファジーの機能不全条件下で異常リソソームの大きさや数に大きな変化は認められなかったが、蓄積した異常リソソームの一部は細胞質に形成される液滴構造内に隔離されることも分かった。これらの結果は、生体内におけるリソソームの損傷とそれに伴うオートファジーの実態解明に役立ち、NCLの病態理解の手掛かりとなる。
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