研究実績の概要 |
シナプス可塑性は動物の学習を可能にするニューロンの性質であると考えられている。学習に伴ってシナプスが新たに出現したりその強度が強化されるなどの変化についてはこれまでの先行研究でも報告されてきた。一方で、そのシナプスがどのような神経回路を反映しているのかについてはほとんど明らかになって来なかった。本研究では運動学習に伴って新生したシナプスの入力源を報告した。その結果、学習初期に出現するシナプスは主に高次運動野由来と目される皮質錐体細胞が主体であるものの、それらは一過性のシナプス形成にすぎず、学習が進むにつれ徐々に新生した皮質-皮質間シナプスは消退していくことを明らかにした。一方で、学習後期では視床由来のシナプスが残存し、それらが獲得した運動技術の維持・記憶に貢献していると考えられた。 大脳皮質にはさまざまな細胞種が存在し、細胞種間のシナプス結合には空間的結合選択性が存在することは明らかにされてきた。一方で、学習のような経時的変化についても、神経回路ごとにその動態が異なることが明らかとなり、シナプス結合には空間的のみならず時間的にも一定のルールのもと変化することが示唆されている。これら、シナプス結合の空間的・時間的結合選択性についての議論を総説論文にまとめた(Sohn J, Anat Sci Int, 2024)。 さらにシナプスの長期増強・抑圧を示す神経回路についても解析を進めている。それにより、可塑性を示すシナプスの配置は神経回路ごとに異なる空間分布を持つことが明らかになりつつある。それらの結果については現在投稿準備中である。
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