本年度は昨年に引き続き, 配向基によるキュバンC-H結合の官能基化を達成するための適切な系の探索と,昨年新たに見出したラジカル的キュバン官能基化反応について詳細に検討した. 前者について,昨年度の終盤にキュバンの金属アミド種によるオルトリチオ化で用いられる配向基であるアミドが,遷移金属触媒的なキュバンC-Hアセトキシ化においても有効に働くことを確認した.この結果をもとに,現在は本反応に最適なアミド配向基の探索を引き続き行っている.今後,本反応の他のC-H官能基化 反応への適用可能性の検証,並びに不斉反応への展開を図るべく鋭意検討する. 後者については,同様に昨年度終盤に新たに見出したラジカル的キュバンC-H官能基化反応について,最適条件の探索,基質適用性の確認を行った.キュバンC-H結合の引き抜きにより系中で生じたラジカル種(キュビルラジカル)が効率的に反応しうるカップリングパートナーの傾向と,キュバン上の官能基による反応性の差異について知見を得ることができた.これらの結果に合成化学的な応用を加え,学術論文投稿の準備を急ぎ進めている. 以上,キュバンの医薬化学的応用可能性を開拓するための基盤技術として,その自在官能基化法の開発を行った.当初設定した2つの方策のうち,「配向基を用いたCーH活性化を経る官能基化」については,後述のラジカル的方法論の予期せぬ発見により進捗が遅れているものの、その実現可能性と方針を示すことに成功した.一方,「CーH挿入反応を利用する官能基化」についてはその実現可能性を示すには至らなかったものの、この検討過程で着想した新たな手法として,「ラジカル的官能基化」の提案と実証を行うことに成功した.
|