研究課題/領域番号 |
21K15221
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
大石 雄基 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (00778467)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 糖認識 / オリゴマー / 糖鎖 / 固相合成 |
研究実績の概要 |
糖鎖はがんの転移やウイルスの感染などに関わっており,創薬ターゲットとして注目されている。しかし,糖鎖と強力かつ選択的に会合する人工分子を開発することは難しく,糖鎖を標的とした医薬品の開発は進んでいない。本研究ではこの難題を解決するために,糖認識部位を有するモノマーをホスホジエステル結合で連結した糖認識オリゴマーを設計した。本オリゴマーは複数の糖認識部位が多点で糖鎖と相互作用することで糖鎖と強力に会合できると期待される。また,モノマー配列を変更することで,任意の糖鎖と選択的に会合できるオリゴマーを設計できる。本研究では糖認識部位とリンカー部位の設計の改良を進め,本オリゴマーが多様な糖鎖との会合に利用できることの証明を目指した。 本研究ではまず Meggers らが報告した人工核酸 GNA (JACS, 2005, 127, 4174) の構造をオリゴマーのリンカー部位に利用することを検討した。このリンカーの長さは糖鎖の単糖ユニット間の距離とほぼ一致している。また,糖認識部位には,Davis らが報告したグルコースと強力に会合するホスト分子(Nat. Chem. 2019, 11, 52)の構造を参考に,糖との水素結合部位と疎水性相互作用部位を持つ構造を利用することとした。現在,エーテル結合やトリアゾール骨格を介して糖認識部位を導入したモノマーの合成に成功している。さらに合成したモノマーを用いて固相合成法によるオリゴマー合成を検討し,5量体の合成に成功した。合成したオリゴマーについては,その基本的物性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(R)-グリシドールを原料とし,アルコール部位をジメトキシトリチル (DMTr) 基で保護した後,糖認識部位の導入を検討した。まず初めにフェノール性ヒドロキシ基を有する糖認識部位を水素化ナトリウムを用いて導入し,エポキシドの開環に伴って生じたアルコールをアミダイト化した。合成したアミダイト体を用いて,一般的な DNA の固相合成を試みたところ,目的のオリゴマーを得ることができなかった。DMTr 基の脱保護または固相からの切り出し時に認識部位がフェノラートアニオンとなって脱離した可能性が考えられた。そこで,ベンジルアルコールのエーテル結合を介して糖認識部位を連結することで,認識部位の脱離を抑制することとした。モノマーの合成は同様の手順で問題なく完了し,合成したアミダイト体を用いて固相合成を試みたところ,目的のオリゴマーを得ることができた。また,DMTr 基を導入したグリシドールにアジ化ナトリウムを作用させることでアジド基を導入し,ヒュスゲン環化により認識部位を導入することにも成功した。合成したオリゴマーは水溶性を有するものの,認識部位の種類によっては水溶性が低かった。
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今後の研究の推進方策 |
すでに確立した合成法をもとに,様々な認識部位を有するモノマーおよびオリゴマーを合成する。合成したオリゴマーと各種糖鎖との会合能を SPR や ITC によって解析する。得られた結果を比較し,会合能が高いオリゴマーと糖鎖の組み合わせを明らかにする。高い会合能を示した組み合わせについては,2 次元 NMR 測定でその相互作用様式を解明する。オリゴマーの量の確保が必要な場合には,液相でのポリマー合成法を検討する。 次に,前項で得た知見を基に本オリゴマーの設計を改良し,多様な糖鎖の認識へと展開する。まずは GNA の構造を利用していたリンカー部位の構造を変更し,グリコシド結合の様式が異なる糖鎖との会合を達成する。例えば,Benner らが報告した人工核酸 FNA (JACS, 1990, 112, 453)の構造を利用すれば,糖認識部位間の距離を少し伸ばすことができる。 さらに,本オリゴマーの設計が複雑な糖鎖の認識に適応できることを証明するために,インフルエンザウイルスが認識することで知られる糖鎖を標的としたオリゴマーの創製を試みる。創製したオリゴマーが生体分子の夾雑系の中でも標的の糖鎖にのみ親和性を示すことをプルダウンアッセイ法により明らかにする。さらに,オリゴマーのヌクレアーゼ耐性評価,細胞毒性評価により,本オリゴマーが医薬品へ利用できる可能性を示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度の共同利用機器の使用料の支払いの一部が2022年度に行われるため,次年度使用額がわずかに生じている。2022年度に予定している研究は,2022年度請求分の助成金をもとに当初の予定通り遂行する。
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