研究課題/領域番号 |
21K15223
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
長尾 一哲 金沢大学, 薬学系, 助教 (50825164)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 有機光酸化還元触媒 / ラジカルー極性交差反応 / カルボカチオン / 強酸フリー / 脱炭酸カップリング / 触媒化学 |
研究実績の概要 |
本研究は、可視光と有機硫黄光触媒により発生させたアルキルスルホニウム種を普遍的かつ実用的なカルボカチオン等価体に昇華させ、高選択的結合形成反応へと展開することを目的とする。具体的には、【研究1】窒素およびフッ素を中心としたヘテロ原子求核剤の基質適用範囲の拡張、【研究2】エナンチオ選択的反応、を目指す。本年度は以下の成果が得られた。
1) 可視光と有機硫黄光酸化還元触媒によるアゾール類と脂肪族カルボン酸誘導体との脱炭酸型クロスカップリング反応を見出した。本反応はコリジニウム塩を添加することで、目的とするカップリング体の収率が劇的に向上することがわかった。アゾール以外にもスルホンアミドが窒素原子求核剤として本触媒システムに利用できることがわかった。 2) 可視光と有機硫黄光酸化還元触媒を用いることで、b-ヒドロキシ脂肪族カルボン酸誘導体を基質とした脱炭酸セミピナコール転位反応が進行することを見出した。本手法により、a位に嵩高い置換基を有するカルボに化合物やa-スピロケトンを効率よく合成することが可能となった。また、アリルアルコールと炭素求電子剤を用いたラジカルリレー/セミピナコール転位反応の開発にも成功した。 3) 可視光照射下、有機硫黄光酸化還元触媒、コバルト触媒、ブレンステッド酸触媒のハイブリッド触媒システムによるアルコールを用いた脂肪族アルケンのヒドロアルコキシ化反応を見出した。本反応は強酸を使用せずに穏和な条件でアルケンからカルボカチオン等価体を発生させることに成功した。量子化学計算により、アルキルスルホニウムではなく、アルキルコバルト(IV)種がカルボカチオン等価体として置換反応に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度見出した、有機硫黄光酸化還元触媒による脂肪族カルボン酸誘導体とアゾール及びスルホンアミドとの脱炭酸クロスカップリングは、それぞれ論文発表と学会発表を行った。脱炭酸セミピナコール転位反応も学会発表と論文投稿(査読中)を行った。有機光酸化還元触媒、コバルト触媒、ブレンステッド酸触媒のハイブリッド触媒システムによるアルコールを用いた脂肪族アルケンへのヒドロアルコキシ化反応は学会発表と論文投稿(査読中)を行った。
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今後の研究の推進方策 |
【研究1】ではフッ素求核剤や炭素求核剤への拡張を目指す。 【研究2】では本年度見出した有機光酸化還元触媒、コバルト触媒、ブレンステッド酸触媒のハイブリッド触媒システムの不斉化を分子触媒の設計から実現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究室に在庫があった試薬などで研究を遂行することができた。また、学会がオンライン開催となったため、旅費の使用がほとんどなかった。翌年度はコバルト配位子や有機硫黄光酸化還元触媒の不斉化のために必要な物品・試薬類を購入しなければならない。おそらく、学会発表も対面となるため、旅費として計上する。
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