研究課題/領域番号 |
21K15227
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中嶋 龍 広島大学, 医系科学研究科(薬), 助教 (70816602)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | PSMA / 前立腺がん / PET / 構造活性相関 / 創薬研究 |
研究実績の概要 |
前立腺がんは日本国内の男性がん別罹患者数が第一位であり、高齢化とともに罹患率が上昇するため、高齢化社会の日本において最も注意しなければならないがんの一つと言える。既存の前立腺がんの診断方法(PSA血液検査等)は精度が低い傾向にあり、精度の高い診断方法の確立が急務である。近年、PSMAと呼ばれる膜抗原が通常の前立腺細胞と比較し、前立腺がん細胞に100-1000倍過剰に発現していることが判明したことから、このPSMAに結合するPSMAリガンドを放射性同位体で標識したPET診断が注目を集めている。PSMAリガンドを用いたPET診断の臨床試験結果から、前立腺がん陽性的中率は既存の診断法と比較して非常に高いだけでなく、前立腺がんから転移したがんの発見も可能であることが報告されている。研究代表者は、2-アミノアジピン酸というアミノ酸を出発原料とする新規PSMAリガンドが従来のリシン(アミノ酸)由来のPSMAリガンドと比較し、より高い結合能を有する傾向にあることを報告している。このようにPSMAリガンドを形成しているアミノ酸の種類を変えることで、PSMAリガンドの結合能を向上させることが可能なことから、本研究では様々なアミノ酸を有する新規PSMAリガンドを合成し、PSMAリガンドに最適な構造を見出すことを目的としている。最適な構造を見出すことができれば、前立腺がんの所在を早期発見するためのPET診断薬として利用可能なだけでなく、前立腺がん細胞に選択的に作用する化学療法薬としてのPSMAリガンドの創出が可能になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに合成を達成した2-アミノアジピン酸由来の新規PSMAリガンドと既存のリシン由来のPSMAリガンドのアミド構造に着目すると、そのアミドを構成する窒素原子と炭素原子の順序が逆になっていることに興味を持った。そこで、2-アミノアジピン酸由来の新規PSMAリガンドのアミドの順序を逆転させた逆アミド型のPSMAリガンドを合成し、そのPSMAに対する結合能の評価を行うことで、アミド構造の重要性を確認することとした。まず、2-アミノアジピン酸を原料にグルタミン酸とウレア結合を形成させ、PSMAリガンドの母骨格を構築し、末端のカルボン酸をクルチウス転位により末端アミノ基に変換することに成功した。その後、末端のアミノ基を種々のカルボン酸と縮合させることで、十数種類の逆アミド型新規PSMAリガンドの合成を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、逆アミド型新規PSMAリガンドの簡易合成法の開発を試みる。それと並行し、これまでとは全くタイプの異なるアミノ酸により構築されたPSMAリガンドの創出を試みる予定である。それらの結合能の評価および精査を行うことで、PSMAリガンドの最適構造を決め、臨床試験に適用可能かどうか検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染症のため、学会参加がオンラインとなり、その分の旅費の差額を次年度使用額に繰り越す結果となった。繰り越し分は次年度の試薬代や溶媒費などの消耗品費用として使用する。
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