研究課題/領域番号 |
21K15229
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
山田 強 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教 (70821479)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フェナントレン / アセタール / アルキン / 転位反応 / 分子内環化反応 |
研究実績の概要 |
水素移動を起点とした分子内転位・環化反応開発研究に取り組んだ。2-アルキニルベンズアルデヒド環状アセタールを基質とすることで、1,5-ヒドリドシフトと分子内環化反応が進行することを見出しており(Org. Lett. 2020, 22, 1883)、これの発展・展開を目指した。具体的にはビフェニルの両ベンゼン環オルト位に環状アセタールとアルキンを置換した基質を合成し、条件の最適化を行った。その結果、AgOTf触媒を使用することで、ヒドリドシフトと分子内環化反応が円滑に進行してフェナントレン誘導体が高収率で生成した。さらに、BF3・OEt2を触媒とした場合も環化反応が進行して、同一のフェナントレン誘導体に変換されることが明らかになった。基質適用性の拡充検討から、基質の置換基や電子的性質によって触媒の反応性が大きく変化することも判明した。そこで、生成物の単結晶X線構造解析や計算化学による遷移状態探索検討をおこなったところ、本環化反応は、AgOTfによるアルキン活性化ルートだけでなく、新たにBF3・OEt2によるアセタール活性化ルートが存在することが強く示唆された。これらの結果をまとめて原著論文として報告した(Bull. Chem. Soc. Jpn. in press. doi:10.1246/bcsj.20220036) また、アルキニルケトンを原料とした高活性中間体の効率的発生法開発研究も順調に進んでいる。現在、系中で発生させた中間体の安定化検討や単離に挑戦しており、さらに連続分子変換法への展開を目指した検討を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
πルイス酸触媒によるアルキンの活性化を基盤とした骨格構築法開発研究の一環として、AgOTfを触媒としたフェナントレン合成法を確立したことに加えて、アルキン活性化能力のないBF3・OEt2触媒を使用しても効率良くフェナントレンが生成することを見出し、新たな反応機構を経由する環化反応の可能性を見出すことができた。 また、アルキニルケトンを原料とした高活性中間体の発生法においては、反応条件の最適化が完了しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
環状アセタールからのヒドリドシフトを起点とした環化反応開発においては、当初の予定通り、アルキンと環状アセタールを分子内に置換した様々な化合物を合成してルイス酸触媒で処理することによって、多様な環構造を有する化合物群の合成を進めていく。また、BF3・OEt2などのルイス酸によるアセタールの活性化メカニズムも考慮して、幅広いルイス酸触媒を検討する。 アルキニルケトンを原料とした高活性中間体の発生法においては、予定通り反応条件の最適化を完了次第、基質適用検討を進めるとともに、保護基の変更や芳香環への置換機能導入によって、連続分子変換を目指して中間体の安定性向上を図る。バッチ法で達成した後は、連続フロー式反応を取り入れた効率的合成法としての確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
以前に研究室で合成した原料や金属錯体を消費して使用したことや、学会がオンライン開催に変更となったことで、予定していた一部の消耗品費や旅費について次年度使用額が生じた。本年度は原料合成と触媒調製に使用する予定である。また、新規反応の発見もあり、当初の予定以上に研究を発展・展開していることから、引き続き実験に必要な消耗品費や学会参加のために計上したい。
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